プロローグ 〜キャンプファイア〜
コテージ前に集合し、キャンプファイア前の注意事項などが先生から語られ、自由時間となった。クラス全員揃ってはいなかったのだが、先生は気づいていたのやらわからない。
「探検しようぜ!!」
それは、キルシュの一言から始まった。
「ほら、ヴァレンシア海岸っつったら、海賊が宝を隠したって話が有名じゃんか。探してみようぜ、もしかしたら何か見つかるかもしれないぜ!」
「海賊って・・・」レモンが呆れ顔。「それって単なる伝説じゃないの? 大体、本当にあったとしても、もう探し尽くされてるに決まってるよ」
「そんなのわかんねぇだろ!? いいんだよ、海賊の宝ってだけでワクワクするしよぉ、もうジッとしてられねぇっていうか」
「面白そ〜」アランシアは同意。
「危険ですの!」ペシュは反対。「もうすぐキャンプファイアが始まりますの! あまり遠くへ行ってはいけませんの!」
「大丈夫だよ〜。今から行くの? だったら、早くしようよ〜」
「まぁ待てよ、アランシア。フンイキってもんがあるからさ、5,6人くらいでパーティ組んで行こうぜ!」
「んもう! ヒトの話を聞いてくださいですの!」
プンプンのペシュを尻目に、キルシュはノリノリである。
「誰を誘うの〜?」
「そーだなぁ・・・・・・キャンディなんかどうだ? そうだ、そうしよう」
「え〜〜〜!? なんで〜〜!? 最近キルシュって、キャンディの事ばっかり〜」
「そ、そんなことねぇよ!!」
会話をじっと聞いていたブルーベリーがレモンに耳打ちする。
「キルシュって、何ていうか、わかりやすいわよね。多分隠してるつもりなんでしょうけど」
「・・・・・でも、キャンディって誰か気になってる相手いるんじゃないの? そんなこと言ってたじゃない」
「かもしれないわね」
コテージ近くではキャンプファイアの準備が進められていた。たまたま近くにいた生徒が、半強制的に先生の手伝いをさせられている。
「ふぅ、どーにかひと段落ね〜。ありがとうね、フレイア、シードル、オリーブ」
何やら鼻歌を歌いつつ、次の準備にとりかかるマドレーヌ。手伝いから解放され、シードルが背伸びをする。
「はぁ、終わったぁ。ボク、肉体労働って苦手なんだけどなぁ・・ブツブツ」
「そんなこと言わないのよ。男の子でしょ」とフレイア。
「男だろうと何だろうと、得手不得手ってものがあるよ」
「まぁねぇ。・・そういえばさっき、キルシュ達が来てたけど、なんか探検とかするみたいよ」
「・・・・・こんな海岸のどこを探検しようっていうのさ、全く・・・・」
3人はキャンプファイア場を離れて海岸線を歩いていた。と、その先に波打ち際に座り込んで海を見つめてたそがれている少年の姿があった。
「どうしたの、カベルネ?」
「・・・・・ハァ・・・切ないヌ〜・・・・」
「・・・・・??」
様子が違う。そういえば、バスの中でも大人しかったが。
「よう」
声がしてそちらを見やると、岩にもたれてやはりカベルネの様子を伺っているらしいカシスの姿があった。3人はそちらに向った。
「・・彼、どうかしたの?」
「1年前に起こった事故で、アイツ兄貴を亡くしてるだろ。思い出してんだよ」
「それで・・・」
「励ましてやりたくても、適当な方法が見つからなくてさ。放ってもおけないし、どうしたらいいもんかな」
一年前の事故・・・おおがかりな魔法実験の失敗による事故により、たくさんの人が死んだという。カベルネの兄、シャルドネもその犠牲者になった。
「一時は元気だったのにね」とフレイア。
「やっぱり、海ってのは人を感傷的にさせるものなんだね・・・」シードルが語りに入る。「元々人は海から生まれたっていうけど、生まれた場所に還って来ると人は過去に思いをはせ・・・・・・・」
「それはいいんだ。アイツを元気づける方法はないもんか」
口上を中断されてシードルはカシスを少し睨むが、彼は知らん顔。
「・・・・心温まる詩でも歌おうか?」
「そういうの以外で」
「なんだよ、そうやっていつもボクの詩を聞こうともしない」
「うざいじゃん」
「なっ! 何だよ、そーやってキミはいつもいつも・・・・!」
「待って! ストップ! ・・喧嘩してる場合じゃないでしょうが」フレイアが止めに入った。
「違うよフレイア、ボクは抗議してるだけさ」
「言い訳するなんて男らしくない」
「い、言い訳じゃないよぉ!」
「あ・・あの・・・・・」
存在が忘れ去られ気味だった、オリーブが声を上げた。
「・・効果あるかどうかはわからないけど・・・励ますことならできるかも・・・」
「頼むよ、オリーブ。シードルには任せておけねぇしな」
「一言余計だよ」
彼らは未だたそがれてるカベルネに近づいた。
「カベルネ・・・」
「・・・ごめんヌ〜、心配かけてるヌ〜・・・。一回思い出すと、ダメだヌ〜・・・落ち込んでしまうヌ〜・・」
「元気だして・・・・・」
オリーブは目を閉じ、何か祈り始めた。何をやっているのかわからなかったが、しばらくしたら。彼らの周囲をカモメが旋回し始めた。そしてどこからか文鳥も現れ、彼らに留まる。
「・・す、すごいや・・、鳥が集まってきた・・・・」
「かわいい〜」
オリーブはニッコリ微笑んだ。動物と心通わせることができる、彼女の特技だ。
「・・・ありがとヌ〜、元気づけてくれてるヌ〜」
「人生、楽しく生きようぜ。落ち込んでても始まらないぜ」
「・・カシスの言う通りだヌ〜。・・アニキのことは、できるだけ早く忘れるヌ〜」
辺りも段々暗くなり、いよいよキャンプファイアが始まった。点火役は、火の魔法が得意なキルシュだ。点火役がいないと困るからと結局、探検はキャンプファイアの後にすることにしたらしい。
「ファイアーー!」
炎が暗闇に舞い上がり、歓声があがった。みんなが赤い光を見つめていた。それぞれに思いを抱えながら。一週間のキャンプの始まりであった。
キャンプファイアの後、キルシュらは探検と叫んでメンバー集めしているようだ。そんな中、キャンディはコッソリと抜け出した。人気のない、浜辺で一人たたずむ。ほどなく、ターバンを頭に巻いた人影が現れる。それを見て、彼女はホッとした表情になった。
「ガナッシュ・・、いきなり呼び出しちゃってゴメンね・・」
「それは構わないけど・・何? 話って」
「あ、あのね・・・」顔を紅潮させるキャンディ。「その・・この前さ、ガナッシュ、誕生日だったよね・・・・」
「・・・・誕生日はかなり前だったけど・・・それがどうか?」
「あ、あの、それでね、あたし、その時誕生日プレゼント用意してたんだけど渡しそびれて・・・。 だから、今渡そうと思って・・・・」
キャンディは隠し持っていた包みをガナッシュに差し出した。当のガナッシュは呆気に取られた表情だったのだが、差し出された包みを受け取った。
「・・ありがとう。大切にするよ」
「うん、あの、それでね、ガナッシュ・・・・」
彼女にとってはここからが本番だった。そう、キャンプというシチュエーションを利用して・・・。
「私ね、あの、その・・・(前からアナタのこと・・)」
「キャンディは誕生日いつ?」
「え? 来月だけど・・・」
「じゃあその時には、何かプレゼントするよ」
「え。・・・ホント? 嬉しい・・・・!!」
「それじゃ」
「え」
ガナッシュはすでに背を向けて、歩き始めていた。あわてるキャンディ。
「ま、待ってよぉ! まだお話があるんだけど・・・・!」
「ごめん、また後にしてくれないか。学校に帰ってから聞くよ」
「うう・・・・あううう・・・・、うん、わかった・・・ごめんね、いきなり・・・」
強引になりきれず、キャンディは立ち去るガナッシュを見送るばかり。普段は、いやというほど彼につきまとっている彼女だが、いざ思いを伝えるとなると勇気が出ない。キャンディはため息をついた。
「・・・まぁいいか。まだキャンプは始まったばかりだしね・・・・」
ガナッシュはしばらく歩いてから辺りを見渡した。クラスメイトの姿も見えず、全く人気がない。そもそも、彼はこんなキャンプシーズンに自分達しか利用者がいないのをやや疑問に感じていた。
(私、わかるんだ。あそこには、何かあるよ。何なのかはわからないけど・・何かが・・・・)
オリーブには何かを感じ取る不思議な力がある。だがガナッシュは実際ここに来るまでは、それを気のせいだと思っていた。ヴァレンシア海岸・・・彼にとっては因縁ともいえる場所の、何かを彼は感じていた。
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