光のプレーン


 9:交錯する思い
「ぎゃぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
 彼らの前で、少年が消えたのはほんの一瞬の間だった。満足げにエニグマは、
「くっくっく・・・・・すぐに他の連中も送ってやるさ・・・・・闇のプレーンにな・・・・・・」
と呟いて、すぐに消えた。
「・・・・・闇のプレーン・・・?」
その言葉の嫌な響きを、皆が感じていた。
「チキショウ!! 目の前にセサミがいたのに!!」
悔しげに地面を蹴るキルシュ。確実に、コトは進行している。
「・・・・闇のプレーンか・・」レモンが考え込む。「名前は知ってるけどね・・・・ニャムネルトの村があるらしいから。でも、行ったことはない」
「行かなきゃいけない・・よねぇ、やっぱり〜」とアランシア。
「セサミを放っておくワケにはいかないしね」
「早いトコ、カフェオレを見つけ出して魔バスを修理してもらわねぇと! おおっし、行くぜ〜!!」
拳を鳴らすキルシュ。もちろん、みんな同感だった。一人を除いて。
「オイラは、エンリョしたいっぴ・・・・・」
「ピスタチオ!」
「闇のプレーンなんて、聞くからに怖そうな場所だっぴ・・・・・行きたくないっぴ・・・・・」
「でも〜・・・・」
「今はどっちでもいいって。とにかくカフェオレを見つけ出すぜ!! その後のことはそん時に考えりゃいいんだよ。行くぜ!!」
勇んで、キルシュは進み始める。皆も後からついて行く。ピスタチオもトボトボとついてきた。


 西に小一時間で、ドワーフの村ゲアラヴァに到着した。建物もガラクタを積み重ねたようなヘンテコなものが多かったが、さらに奥にある、これまたヘンテコな塔がそびえたっている。
ゲアラヴァ名物、キード・モンガである。
ここは工場になっており、ドワーフ達が日夜機械技術の研究・開発に従事している場所であった。
カフェオレがここに連れてこられているかもしれないとの目撃情報を頼りに、ここまでやってきたのだが・・・・
ドワーフ達に話を聞いても、彼らは自分達の研究にしか興味がないらしく、まともな返答は殆ど得られなかった。
「あそこに行ってみるしかないか・・・」
村の奥にそびえたつ塔・・・キード・モンガ。一行は、足早にキード・モンガへと向った。
 それとほぼ入れ替わりで、旅のドワーフが村を訪れた。3人のドワーフと、マッドマン。
ドワーフ達は、目に邪悪な光をともしていた。
「やっと着いたか・・・・」
「奥にあるキード・モンガの頭領と融合すれば、ドワーフどもは掌握できるが・・・」
「俺はいやだぞ。ドワーフみたいな、魔力も持たない生き物と融合しつづけるなど・・・・・。
それよりは、あのガキどもと融合した方がいい」
ドワーフの一人が、連れているマッドマンをチラリと見上げた。
「こいつはどうする気だ?」
「・・・・・ここでの作業が終わり次第、闇のプレーンに連れて行く。あの火山にな」
「・・・なるほど。・・・さて、とりあえずジャマなドワーフどもは片付けておくか」
ドワーフはその手に闇の魔力を集め、手近にいた(普通の)ドワーフに投げつけた。
「・・んだぁ!? ・・・・ひぃやぁぁぁぁ・・・・・・!!!!」
闇の波動に包まれ、ドワーフはその場から消えた。これに、他のドワーフ達も動揺を見せた。
「なんだべ!? おめぇたち、ナニモンだべ!!」
「シュクセイだぁ〜!! シュクセイが始まっただ〜!!!」
あわてふためく者、くってかかる者、ただ呆然とする者、色々いたがあのドワーフ達・・エニグマは容赦なく闇の魔法を浴びせかけた。
「俺たちは先に行くぞ」
エニグマ二人がキード・モンガに向って歩き始め、残ったのはエニグマ一人とずっと連れまわされているショコラ。エニグマは家に火を放ち、キード・モンガを除いて村はもう壊滅寸前だった。
「見つけたぜ、テメェ!!」
エニグマはゆっくりと振り向いた。ニンゲンの少年だ。
「さっさとショコラを返しな! さもないと・・・・」
「どうすると?」
「切り刻む!!」
「くっくっく・・・・・。そうだな、こんな魔力もないドワーフなんかといるよりは・・・・・。
貴様、俺の宿主になるがいい・・・くっくっく・・・・・・」
エニグマはゆっくりと向き直った。隣に居たショコラもつられて後ろを向く。
「あー、カシスだー」
あまりにも呑気な声に、少年は脱力した。
「・・・・ショコラ、あのなぁ・・・・・・、・・・・・いや、やっぱいい・・・・・・」
さらわれたという自覚すらないのだろう。それほどにマイペースな性格だ、ショコラは。
助けなければ、いつまでもこのままだ。
「・・・とにかく、これ以上はテメェの好き勝手させねぇ。ブッ倒す!!」
燃え盛る炎の舞う中、彼らは対峙した。
大きな、爆音が響いた。



 その音をフレイア達が聞いたのは、キード・モンガに進入して数分後のことであった。
音もそうだが振動で、ピスタチオはひっくりこけてしまった。
「何だい、何が起こってんのさ・・・」
レモンが村の方を見やる。だが、ここからは見えない。
「どうする? 戻る?」フレイアの問いに、レモンはしばし考えた。
「・・・・・ヘタに余計なことに首つっこまない方がいい気もするけどね・・・・・・」
「でも〜、それじゃあ放っておくの〜?」
「・・・・・・・・・・・・」
「くっくっく・・・」
『!!!!!!!?』
彼らは一斉に身構えた。入り口の方からドワーフが二人歩いて来る。
「こんなところにもいたか」
「くっくっく・・・たかが5人なら問題にもならんな・・・・俺は上に向おう」
「わかった・・・・宿主は選ばなくていいのか?」
「他のガキどもを探す」
「テメェら、何ワケわかんねぇことをごちゃごちゃと・・・!!」
たまりかねてキルシュがフッかける。が、ドワーフ達は聞いてもいない。
「・・・ね、ねぇ〜、キルシュ〜・・・・」アランシアの声は震えている。「もしかして、あのドワーフ達って・・・・・」
「あ?」
「・・・まさか!」
「くっくっくっく・・・・・・・」
ドワーフの一人が、ニヤリと笑った。そして、次の瞬間ドワーフの姿は消え去り大きなムカデのような生き物が姿を現した。レーミッツに現れたやつより、さらに大きいエニグマ。
「ヒィヤァァァーーーーーッ!! 出たっぴーーーーーーーー!!!!!」
「本当、どこにでも現れるわねぇ・・・・」嘆息するレモン。
「戦うぜ!!」
「言われなくても」
彼らも、光のプレーンに来てから幾度となく戦いにさらされた。
元々の魔法使いとしての素質もあり、彼らは確実に強くなっていっていた。
そして、それを見抜けない愚かなエニグマ。

「ぐわぁぁっ・・!!」エニグマが大きく後退した。「な、何・・・・コイツら、こんなに・・・・・??」
「オレ達を甘くみねぇことだな!!」
「だいぶ弱ってるね、一気にいくよっ!」
「・・くそぉぅ!! こんな・・・ドワーフなんかと融合していなければ、こんなヤツら・・・・!!!」
それだけ言い残して、エニグマは倒れた。だが、その後彼らは驚愕することになる。
後に残された、一人のドワーフの遺体を目にして。
「・・・・・・・え・・・なんで〜・・・エニグマじゃあなかったの・・・?」
アランシアの呟きに、誰も答えなかった。答えられなかったから。
今まで倒したエニグマは、何とも融合していなかった。倒した後に、死体を残すこともなかった。だが・・・
「・・・・融合・・・・融合したエニグマを倒すってことは・・・・・」
エニグマに融合された者も倒すということ・・・・
「オ・・・オイラ達、ドワーフも殺してしまったっぴ・・・・・?」
「そんな・・・・」
「落ち着くんだ」とレモン。「・・・エニグマと融合した時点で、ドワーフじゃなくなってたんだよ・・・そう思うしかないでしょ・・・・・」
「でも・・・」
そこにいるのは、まぎれもなくドワーフ。戸惑いを隠せない一行。
「・・・・・・いつまでも、こんなコト繰り返してちゃいけない・・・」
フレイアは、ゆっくりとドワーフの遺体に近づいていった。そしてそっと手をかけた。
「フレイア・・・」
「早く、みんなで一緒に帰ろうよ。ウィル・オ・ウィスプに・・・・」
切なる、願い。



  ⇒NEXT


  ⇒小説の間へ