光のプレーン


 6:新たな道
 どうにかエニグマを倒した一行は、揃って宮殿の入り口まで戻った。
「・・・・では我々は村に戻る」
道中ずっと静かだったトルティーヤが改めて向き直った。
「トルティーヤさん・・・・」フレイアが呟いた。
「なんだ?」
「・・・ありがとう」
「・・・・・・・・・・・」
彼は答えなかった。
だが、気持ちはみんな同じだった。
「・・それじゃあ」
言葉すくなに、彼らはもと来た道を戻っていった。それを、皆は黙って見送った。
彼らも、複雑な気持ちに違いない。
「・・・・さ、オレ達も行こうぜ」
思いっきりのびをして、キルシュがみんなを見渡した。
「・・・・ちょっと待って」と、止めたのはレモン。「全員で行くことはないよ。あんまり人数多くても目立つからね」
「そうね〜、カフェオレを探すだけだしね〜」アランシアもうなずく。
「・・・ということは、何人かは魔バスで留守番だっぴか? イエッサーーーーーー!!
留守はオイラが預かるから、安心して行ってきて・・・・ピッ!!」
「まぁ待てよピスタチオ」
グイッとピスタチオをうしろから羽交い絞めるキルシュ。
「お前、魔法使えるようになったんだって? だったらもっと魔法鍛えねぇと、学校ヤバいんじゃねぇの?」
「ぴっ!!? い、いや、それは・・・・・でも、オイラがついていったって足手まといだっぴ!!
魔法は自分で勉強するっぴ!! だから留守番・・・・・!!!!」
「ピスタチオ」
しばらく考え事していたレモンがふと声をあげた。
「誰が行くのがいいか考えてたんだけど・・・・ピスタチオ、アンタにも来てもらいたい」
「なんでだっぴ〜〜〜〜!!?」
「留守番は、ブルーベリーとペシュにしてもらうよ」
「レモン!!?」途端にブルーベリーがくってかかった。「私は連れて行ってもらえないの!?」
「ああ。また発作が起こってもいけないでしょ?」
「もう大丈夫よ。だから・・・!!」
「ダメ。・・・・今回ばかりは、本当にヤバい。アンタを死なせてしまうかもしれない。
無理な戦いはしないに越したことはないよ」
「死ぬのなんか怖くないわ。・・・ずっと、長生きできないって言われ続けてきたもの・・・・
だから、せめて今だけでも一緒にいたいのに・・・・」
ブルーベリーはうつむいた。
「ブルーベリーちゃん・・・・」とペシュ。
「無理しないほうがいいよ〜」とアランシア。
「オレ達に任せろよ、ブルーベリー」とキルシュ。
「みんな、レモンの味方なの」吐き捨てるように呟くブルーベリー。「私だって戦えるわ・・・さっきだって・・・・・」
「・・・やれやれ」
レモンが呆れて頭を振った。そしてフレイアを見て、
「とんだお嬢様だね。・・・アナタからも何かゆってやってよ。アナタの説得なら聞くかもしれない」
「・・・・・・・ブルーベリー・・・。私は、別に止めたりしない」
「フレイア!?」
「死ぬのは怖くないって言ったよね・・・・。アナタは怖くなくても、私達は怖いよ。
・・・・・・私達が、じゃなくて、アナタが死んでしまうことが」
「・・・・・・・!」
「アナタを守りたいから留守番してほしいのに、それでも行くっていうんなら止めない。
でも、アナタが死んだらみんな悲しいよ。みんなずっとそれを背負って行かなきゃいけない。
それだけの覚悟があってのことなら、一緒に行こうよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ブルーベリーはずっとうつむいていた。隣で、レモンが彼女の肩に手を置いた。
「私達、親友だよね。親友のこと心配しちゃいけないかな・・・・」
「・・・・レモン・・・私・・・・・」
やがて、彼女は頭を横に振った。
「ごめんなさい、ワガママだった。ペシュと、魔バスで待ってるから・・・・必ず戻ってきてね・・」
みんなは力強くうなずいた。ペシュも彼女に近づいた。
「それじゃ、行きますの。カフェオレちゃんのことは任せましたの!」
「ああ。そっちも気をつけて戻ってね。・・・まぁ、モンスターはいないし、大丈夫だろうけど」
「わかりましたの!」
「・・・頑張ってね・・」
ペシュとブルーベリーは再びワクティ村の方へと歩き始めた。
「・・・・・・しかし、相変わらずビックリさせるね、アナタも」
「そう?」フレイアは首をかしげた。
「まぁ、アタシは何が何でも彼女らは引き返させるつもりだったよ。
・・・・あんなエニグマに何度も遭遇してちゃ、彼女らを守りきる自信なかったからね」
「エニグマか・・・・」
フレイアは溜息をついた。


「エニグマか・・・・」
 ほぼ同じころ、別の場所でも同じ溜息をついていた者がいた。
彼はレーミッツよりさらに西、トルーナ村でやはり数人の仲間たちと共にあった。
少しの間考え事、と一人になっていたが、仲間のところへ戻ることにしたようだ。
村の入り口付近に仲間達がたむろしていた。と、本来いた人数より多いようだった。
「ムチャだヌ〜! せっかく再会したんだから、一緒に行けばいいヌ〜!!」
「・・・一人は危険だと思う・・」
「大丈夫だよ。光のプレーンには強いモンスターはいないしな。強いていうならエニグマか」
「だから、ソイツが一番ヤバいんだヌ〜!!」
「カベルネ〜、本人が行くって言ってんだから、いいんじゃないの〜?」
「シードル! ムセキニンだヌ〜!」
「だって、どうせ止めても行っちゃうよ。ボクだって最初置いてかれたからね」
「・・・どうしたんだ」
仲間達の会話に割って入る。
「あ! ガナッシュ!」
ここに、クラスメイトは6人いた。ガナッシュは一人考え事していて今合流したが。
言い争っている中心になっているのがカベルネとカシス、参加しているのがシードルとオリーブ、少し離れたところで成り行きを見守っているのがキャンディ。
「なんだ、いたのかガナッシュ」とカシス。
「まぁな・・・ところで、何の話なんだ? 行くとか行かないとか・・・」
「ガナッシュ! 聞いてくれヌ〜! カシスが一人で行くっていうんだヌ〜!」
「どこに?」
「・・・・・どこかは知らないヌ〜! とにかく一人じゃ危険だからガナッシュからも・・・・!」
「別にいいじゃないか、カベルネ」
「なんでだヌ〜〜〜〜!!?」
一人騒ぐカベルネをよそに、ガナッシュは冷静に、
「何かあったのか?」
「ショコラがさらわれちまってね。ちょっと行って連れ戻してくるよ」
「わかった。まぁ気をつけて」
「オーライ」
一連の会話をジッと聞いていたシードル。
「・・・・自然だなぁ。よくまぁ、こんなときにフツウにしてられるよね」
「あせってもしょうがないだろ?」とカシス。
「だからって、どこかもわからない場所に放って行くことないじゃないか!
追いつけたから良かったものの・・・・ブツブツ」
「良かったな」
「あーーーー! もう!! キミって人は!!」
「ねぇ!」
と、傍観を決め込んでいたキャンディが我慢できなくなってか、会話に入ってきた。
「一人で行こうがどうしようがどっちでもいいからさぁ、ここで話し込んでてもしょうがないでしょ?
ショコラもだし、他のみんなも探さないと。行動しましょうよ」
「・・・そうだな」
「じゃ、俺はこのへんで。ま、頑張ってくれよ」
片手を振って、一人外へ歩き始めるカシス。
「・・・・ボクらはどうすんの? ガナッシュ?」
「そうだなぁ・・・・東に行ってみるか。大きい宮殿があったと思う」
地図を広げ、ガナッシュは東の空を見つめた。




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