光のプレーン


 5:宮殿地下
 一行は、宮殿の地下に足を踏み入れた。まばゆい光とともに、深い闇もまたどこかに感じられる。
「あっ! あれ!!」
奥のほうに、見覚えのある人影があった。だが・・・一人は苦しそうにうずくまっていた。
「ブルーベリー! ペシュ!」
レモンの声に、ペシュが振り向いた。そして、安堵にも恐怖にも似た表情を浮かべた。
「レモンちゃん・・みんなも・・・・大変なんですの・・・・。ブルーベリーちゃんが〜・・・」
「見たらわかるさ」
言いながら、レモンはブルーベリーのそばに駆け寄った。皆もそれに従う。
「・・・・大丈夫、ブルーベリー?」
「・・・・・・・レモン・・」
彼女は病弱だ。ここにきて、発作が起こってしまったようだ。・・・よりにもよって。
「どうしましょうですの〜」
「とにかく、ここから出ましょう。グズグズしてたら、エニグマに出くわすかもしれないからね。
キルシュ、手ぇ貸して・・・」
「くっくっくっく・・・・」
『!!!!!!』
突如、歓迎できない笑い声。さらに奥のほうからムカデにも似た大きな生き物が現れた。
「・・・お出ましね」
「やだ〜、こんな時に〜」
「一匹ならどうにかなるかもね」レモンが指を鳴らした。「ペシュとピスタチオはブルーベリーをお願いね」
ブルーベリーを連れては逃げられないと判断し、彼女は戦う道を選択した。
「よぉぉっし! やってやるぜ!」キルシュもそれに同意する。
「くっくっくっく・・・・・」
「・・・!」
嫌なものを感じてフレイアはバッと後ろを向いた。同じ生き物がもう一匹、彼女達が進入してきた場所から歩み寄ってきているではないか!
「2匹!?」
「くっくっく・・・2匹とは、虫みたいな呼び方をしてもらって光栄だな・・・くっくっく・・」
挟み撃ちだ!
「・・・・・」
レモンは冷静をよそおうが、もうどうしようもないことを悟っていた。エニグマを2体相手にするには、体力も人数も足りない。
格闘をかじっていた自分だが、さすがに一人で戦うには限界があった。
「まだ死にたくはないだろ? ・・あきらめろ・・・そして身をゆだねるのだ・・・・・」
「ヒィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!! 死にたくないっぴ!! 喜んでユウゴウしますっぴ〜〜〜〜!!」
「ピスタチオ!!」
もうだめ・・・? 融合するか、死ぬしか道がない・・・・?
「あきらめるなっ!!!」
心を見透かした声。それは、新たに現れたエニグマのさらに後方から響いた。
同時に、
「ぎゃあぁぁぁーーーーっ!!」
その前方にいたエニグマが絶叫を発した。見る間にエニグマの体が光に包まれ、そして消えた。エニグマもろとも。
これにはもう一体のエニグマも驚いたようだ。
見ると、あの愛の大使3人組が!
「トルティーヤ!」
一行は歓喜の声をあげた。が、トルティーヤは固い表情をくずさない。
「油断するな! もう一体いるだろう!」
ハッとして、一行は改めてエニグマに向き直る。
「・・・ぬぬ・・・こうなれば、まとめて八つ裂きにしてくれるわ!」
「ハン! できるもんならやってみなっ!!」
レモンが、キルシュが身構えた。

「大丈夫か!」
 3人組は倒れこむブルーベリーと付き添う二人に近づいた。彼女は苦しげながら笑ってみせる。
「トルティーヤちゃん、さっきのは何の魔法ですの!?」ペシュが素朴な疑問をぶつけた。
愛の大使族は、生まれながらの愛の魔法の使い手。愛の魔法に、対象を傷つける力など存在しない。
「アレは村長ワンドの力でやんす」かわりにタタンが答えた。「1回だけ、光の魔法を使うことができるんでやんす」
「1回だけ・・・ってことは・・・」
「1回使ったら、壊れてしまうんでやんす」
「まぁ!! それなのに!? 大事なものだったんじゃないですの!?」
トルティーヤはしばらく無言だった。
「くっくっくっく・・・・・」
『!!!??』
この声は!
「まさか・・・・」
ブルーベリーは前方・・戦いの行方を見やる。まだ、戦いは続いていた。・・・ということは・・
「ヒィィィィ!!  もう一匹いるっぴ!!!」
ピスタチオの叫びを受けて、地上への出入り口から新たなエニグマが姿を現した。
「そ・・・そんな・・・・!!」
6人は迫り来るエニグマを見据えることしかできなかった。
「・・・・くっくっく・・・そこの青い髪のオマエ、中々の魔力だな。どうだ、融合しないか? くっくっく・・・」
「・・・・・・!!」
思わず、ペシュはブルーベリーにしがみついた。エニグマは、ブルーベリーを狙っている・・・
「くっ・・・」
「だ、だめだっぴ〜〜!! やられるっぴ〜〜〜!! とうとうおしまいだっぴ〜〜〜〜!!」
「ピスタチオちゃん!!」
エニグマは徐々に迫ってきていた。今エニグマと戦っている仲間達も、後方のエニグマには気づいているものの、目の前の敵に手一杯で救援に向えない。
「う・・あ、あっしらが盾になるでやんす!」
親衛隊が、前に進み出た。しかし、すっかり腰が引けている。
「ム、ムスコさん達は逃げてくだせぇ!」
「バカなことを!!」
「ムスコさんを、いや、(次期)村長を守るのがあっしらの務めでやんすよ・・!」
「ダメですの!!」ペシュが叫んだ。
愛の大使に戦う力などない。それは、愛の大使である彼女もよく知っていた。
平和を愛し、他人を愛し、争いをなくすために全てを捧げられる種族。
戦うことは、彼らにとってどうしようもなくなった時の、本当の最終手段。それすらも、彼らにとって最も嫌うべき行為に等しい。
「誰も死んだらいけませんの!! ダメなんですの〜〜〜〜〜!!!」
ブルーベリーに抱きついたまま泣き出すペシュ。
「・・・・魔法を使うスキがあれば・・・・・」苦しげに体を起こすブルーベリー。
「・・・・・ぴ・・・どうしたらいいんだっぴ・・・・・・」
こんな時だ。魔法が使えたら、と強く思う。フレイアやアランシアみたいに魔法で援護することだってできるのに。
エニグマが近寄ってくる。もう、すぐそこだ。
「だ・・・・ダメだっぴ〜〜〜!!」
ピスタチオはダメモトで両手を上に掲げて魔法の構成にチャレンジした。
この中で、攻撃できる魔法を扱える(可能性のある)のはブルーベリーと自分しかいないのだから。
「どっかいけっぴ〜〜〜〜〜〜!!!」
「あっ!」
エニグマの頭上に、空間の歪みが発生する。そしてそこから


   ごんっ


「がっ!!!」
エニグマの頭にどでかいクルミ(!!)が落下した。思わず歓声が上がった。
「・・・ピスタチオちゃん!!」
「・・・・・・・・え・・・・今・・・・オイラがやったっぴ??」
「うわわわわわ、また来るでやんす〜〜〜!!!!」
痛みをこらえながら、エニグマが再度接近してくる。今度は意図的に魔法を構成し、ピスタチオは再度魔法を放った。
再びクルミがエニグマの頭にヒット。かなり大きい音がした。
「・・・・やったっぴ!! 魔法が使えたっぴ〜〜〜〜〜!!!」
「やったですの、ピスタチオちゃん!!!」
「おお〜〜犬ちゃん、すごいでやんす!!」
盛り上がる一行。その間にブルーベリーが魔法を構成していた。
「みんな、伏せて!」
鋭い声に皆がバッと身を伏せる。ブルーベリーは両手を前に突き出し魔法を放つ!
「アクアグラッセ!!」
途端に周囲の温度が急降下し、エニグマの足元に水分が集まる。そして、思いっきり上に突きあがる!!
「ぐわぁぁぁっ!!!」
噴水にあおられてその巨体が持ち上がり、天井に叩きつけられる。落下して、今度は床に。
「やった!」
「大丈夫!? みんな!」
エニグマと戦っていた仲間がこちらにやってきた!
「エニグマは倒したの?」とブルーベリー。
「まぁ、なんとかね」レモンが答えた。
もう一匹は、もう相手にもならなかった。





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