光のプレーン
11:回帰
眩しい木漏れ日が、ややなつかしく感じられるくらい。彼らは久々に森に戻っていた。
「大変なことになってますの・・・」
「闇のプレーンね・・・・・」
魔バスの修理の間、一行は南の森で森林浴しながら今後を話し合った。
今いるメンバーは、フレイア・キルシュ・ピスタチオ・アランシア・レモン・ブルーベリー・ペシュ・カフェオレ(バス修理に参加中)。
結局、半分しか集まっていなかった。
そして今いないのは、ガナッシュ・キャンディ・オリーブ・シードル・カベルネ・カシス・セサミ・ショコラ。
このうち、セサミはエニグマにさらわれて闇のプレーンにいるのではないか、と判明している。
「要するに、このまま光のプレーンを探すか、闇のプレーンに行くか、って選択肢でしょ?」
レモンが皆を振り返る。
「学校に帰る・・・って選択肢はないんだっぴか・・・?」小声で呟くピスタチオ。
「バカ言ってんじゃねぇ!」
「魔バスが直ったら〜、プレーン移動って自由にできるんでしょ〜?」
「って、バルサミコは言ってたけどね」
「だったら〜、やっぱり闇のプレーンに行ったほうがいいんじゃないかな〜・・・。
だって、セサミ一人だけで怖そうなところ連れて行かれて・・・早く助けてあげないと〜」
「そうね・・・その方がいいかもね」とブルーベリー。
「なら、光のプレーンにいる他のみんなはどうしますの?」
「何人か残って・・・・」
「・・待って」
フレイアが、それを制した。みんなが彼女に注目する。
「・・・・セサミをさらったエニグマ、闇のプレーンにみんな連れて行く、みたいな言い方してたよね?
もしかしたら、他のみんなも闇のプレーンに連れて行かれた可能性もないわけじゃない・・・」
「・・でもねぇ、フレイア」とレモン。「ガナッシュ達は5人で行動してたんでしょ? 簡単に連れて行かれることもないと思うけどね・・・・・」
「不意を突かれたとか〜」とはアランシア。
「それもあるかもしれないけど。でも、あくまで可能性があるってレベルだからね。
ここにいるかもしれない仲間を取り残して、私達だけ他のプレーンに行くなんて、私はイヤだわ」
『・・・・・・・・・』
みんな押し黙った。彼女の言いたいことはもっともだ。だけど。
(それでも・・・・・みんなはもう、ここにはいないの・・・)
彼女は知っていた。精霊達のささやきで。
そのとき。
「おーーーーーーーーーいっ!! 修理終わったぜーーーーーーい!!!」
バルサミコのでかい声が響いてきた。
「よっしゃあ!! これで闇のプレーンに行けるぜ!!」
「魔バスに戻りましょう」
7人が魔バスに戻ってみると。意気揚々としたバルサミコが満足げにこちらを見ており、一方のカフェオレは魔バスにもたれてすっかりダウン。
「いやー、全くカフェオレ君のおかげだな。魔動力ジェネレーター持ってるんなら、早くいってくれりゃ分解する必要もなかったのに、ヒトが悪いヤツだな。あ、ヒトじゃねぇか。がっはっはっはっはっは・・・・・!!!!」
がすっ
「黙んな」
口上のうるさいバルサミコを黙らせて、レモンはカフェオレを見た。
「ヘヘ・・・コンナ アッシデモ ヤクニタチマサァ・・・・・プシュ〜・・・」
「もしかして、ソレがドワーフ達の・・・・」
「マァナ」何故だか威張るカフェオレ。「ヤミノプレーンニ イクトキイチャ、コイツガヒツヨウ ナンダッテサ。シカモ、ワープキノウマデ トウサイサ。カフェオレ サマサマダナ。ソンケイシナサイ」
「え?」
みんなは顔を見合わせた。
そして、レモンが再びカフェオレを見た。
「ン?」
「ワープ機能だって・・・?」
「オウ。プレーンノイドウハ ムリダガ、プレーンノナカナラ ダイジョウブッテ ハナシダゼ」
「もしかして、それを使えばここにすぐ戻ることもできたんじゃないの・・・?」
「・・・・・・オオ! ソウイエバソウダナ」
ドワーフ達の村から、彼らは約二日かけて歩いてここに戻ってきていた。
・・・自然と、レモンは指を鳴らしていた。
「・・・モシカシテ、オコッテマスカ? レモンサン・・・・?」
「どうやらそのようよ・・」レモンは両手に魔力を集め始めていた。
カフェオレは古属性の古代機械。古属性は、レモンの持つ雷属性に弱い傾向にある。
「ギャヒーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
「さて、どうするよ」
改めて、彼らは相談を始めた。
「オレとしちゃ、こんなとこでグズグズしてないで、さっさと行きてぇんだけど」とキルシュ。
「そうねぇ・・・・」フレイアはバルサミコを見た。「これで、闇のプレーンにも行けるんでしょ?」
「おお。任せろ!! 闇のプレーンだろうが何だろうが自由だぜ。一回は」
「・・・・・一回?」
「おう!! 一回だ!!」
「・・・・ちょっと待って・・・」ブルーベリーが頭を抱えた。「修理できたんじゃなかったの?」
「こんなトコじゃまともに修理できるワケねぇだろが。応急処置だよ、応急処置。がっはっはっは」
「・・・・・・・・・・ダメっぽい〜・・」とアランシア・。
「それじゃいけませんの!!」とペシュ。
「何だっていいだろ、闇のプレーンに行くんだよ! さっさと行こうぜ!」
「キルシュ。アンタ、意味わかってないでしょ? 一回きりなんだよ?」レモンがたしなめた。
「はぁ? 闇のプレーンになんか何回も行かなくていいだろが」
「一回きりってことは、闇のプレーンに行ったら戻ってこれないってことでしょ」フレイアが補足する。
「・・・・・・・・」
キルシュの動きが止まった。そこまで考えがまわっていなかったようだ。
「ねぇ、だったら」ブルーベリーが提案する。「一回、学校に戻ったらどうかしら? 学校なら、魔バスもちゃんと修理できるんでしょうし」
「それなら、光でも闇でも自由に移動できるわね」
一回きりで闇のプレーンに渡るよりは、学校に戻って魔バスをちゃんと修理してもらった方が安全に違いない。ここにもすぐに来られるんだろうし。
「・・・でも、それじゃ魔バスが直るまで学校で待ってなきゃいけないのかしら」とフレイア。
「そうか・・・・・待ってる時間がもったいないよね・・・・・・・どうしようか・・・」
だからといって、ここに残るのも。エニグマに襲われる危険はまだ残っているのだから。
「オレは思ったんだがよ」バルサミコが口を挟んだ。「連中が闇のプレーンにお前達を連れて行こうってんなら、もしここに誰かいたとしても闇のプレーンで待ってりゃそのうち来るんじゃねぇのか?」
「ポジティブすぎだよ」とレモン。
「がっはっはっは、知的ジョークが過ぎたか? がっはっはっは・・・・」
「・・・・・もういいよ」
「まぁ待てよ。考えがあんだ」
「もういいってば」
「まぁそう言わずに聞いてみろよ。学校に召喚室って部屋があんだけど、そこはまぁ本来は他のプレーンから何かを召喚してくる機械があるトコなんだよ。
でも、ソイツをちょいと応用して逆回転かなんかさせたら、学校から他のプレーンに行くこともできると思うんだな」
『えっ!!!』
みんなが一斉に注目した。
「それ本当? バルサミコ」
「おう。魔動力ジェネレーター装備したカフェオレの力はいるけどな」
「ヘッヘッヘ、マタオレサマノ デバンカ」
「魔バス直している間に、先行してカフェオレに闇のプレーンに行ってもらえばいいんじゃねぇか」
「エッ。オレガ イカナキャイケナイ?? イヤチョットソレハ・・・・」
「とにかく、学校に戻ろうよ〜。早くしたほうがいいよ〜」
「続きは学校に戻ってからでいいでしょ」
「決まりだな」
「オレガ イカナキャイケナインデスカ〜〜??」
「そんじゃ、さっさと乗った乗った! ブイブイ行くぜ〜!!」
みんなのことは心配だが、確実な方法を取ったほうがいい。
一旦学校に戻って魔バスを修理してもらってから、再びみんなの救出に向うという方向で話は決まった。
魔法学校ウィル・オ・ウィスプ。コヴォマカ国・・・いや物質プレーンでも最大規模の魔法使い養成学校である。数千人の生徒を抱える大きな学校だが、現在夏休みなため生徒の姿はまばらであった。
彼らは、学校に戻ってきた。出発した時の半分以下の人数で。
「帰ってきたっぴ〜〜〜・・・・・・なつかしい学校だっぴ〜〜〜〜」
ピスタチオがまっさきにバスから降りた。
「それじゃ、オイラはこのへんで・・・・・」と、帰ろうとする。
「待てよ、ピスタチオ!」次に降りてきたのはキルシュ。「キャンプを途中でやめたら退学だぜ?」
「い、今はそんなこと言ってる場合じゃないっぴ!!」
「そうかなぁ・・・」アランシアもバスから降りる。「校長、最初からそのつもりだったんじゃないかなぁ・・・」
「ぴっ!!!!?」
「確かにね」フレイアも同意。「校長先生がこの事件のこと全く知らないなんて考えにくいし」
「退学とかいって、この件から逃げずに立ち向かえ・・・ってことなんじゃあないの?」とレモン。
「・・・・・ウソだっぴ・・・・・・・・・・・そんなことがあっていいっぴか・・・」
「みんな、感じてたのね」ブルーベリーもバスから降りてきた。
「多分、他の連中も感じてると思うよ。だから、ガナッシュ達も集まって動いてたんでしょ?」
「・・・・気づいたようだな、青少年」
バルサミコがよっ、とバスから降りる。
「実はな、魔バスを光のプレーンに送り込んだのはエニグマじゃなくて校長なのさ。
お前達は知らないだろうが、この国の魔法使いの何分の一かは、エニグマが憑いている。
エニグマどもと戦うことにでもなったら敵に回る連中さ、いざって時に頼れない。
だから校長はお前達に、エニグマってやつを知ってもらわないといけなかったわけだな。
校長は、お前達に期待かけてるんだぜ?」
「んまぁ! すごいですの!」とペシュ。
「そんな期待しないでいいっぴ・・・・・」とピスタチオ。
「大変な使命だわね」とブルーベリー。
「・・・んじゃ、おれはちょっくら召喚機をいじってくるわ」
「アア、マッテ! ・・・ヤミノプレーンヘハ、ドウシテモオレガ イカナイト イケナイワケデスカネ・・・・・」
やや不安げなカフェオレ。
「お前は必須だわな。・・・あと、まぁ・・・・・召喚機に入れるだけの数なら・・・・・そうだな、カフェオレとせいぜい後二人ってとこだ。かなり狭いからな、アレは。誰が行くかはそっちで相談しろよ」
「・・・・・・イカナケレバ イケナイノデスネ・・・・・シクシク・・・」
「それじゃあな」
バルサミコは鼻歌まじりに校舎へ向う。
「カフェオレと、後二人か・・・・・」
一行は円陣を組んだ。
「どうする?」
「私行く!」ブルーベリーが即答した。
「またアンタは・・・・」呆れるレモン。
「オイラはエンリョするっぴ」とピスタチオ。
「そうだね・・・・カフェオレ」レモンはカフェオレを見た。「アンタが決めなよ。アンタは行かないといけないワケだし、アンタが頼れる人を選んだ方がいいでしょ」
「ウムム・・・・ソレデハ・・・・・・・」
カフェオレはみなを見渡した。
「ボウシガステキナフレイアサンニ・・・・・・」
彼女はうなずいた。
「ソンナフレイアサント ベストペアナ ピスタチオ デ・・」
「なんでだっぴかーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!?」
「いいの、それで」
「ケッコウデ ゴザイマス」
「そう。・・・まぁいいけど」
「チェッ、留守番かよ」不満そうにキルシュが鼻を鳴らした。
「いつでも替わるっぴ」
「つーワケにもいかねぇだろ」
「うううううう・・・・」
一人、ピスタチオはさめざめと泣いた。
「・・・・順調のようじゃのう・・」
学校の一室。外に停まっている魔バスを見やり、老紳士は呟いた。
「やはり、彼らならあるいは・・・・・」
考えにふける老紳士。
だが、ひとつ気になることはあった。
三年前・・・・・学校の生徒だった少女がキャンプから帰ってきてすぐ行方をくらました。
エニグマに憑かれて。
その弟が、今回のキャンプに参加している。
真実を知ったとき、彼はどのような行動を起こすか・・・・
「わしらは見守るしかない・・・・か。あの子達に、希望を託して・・・・・・・」
気づいたときには、どうしようもなくなっていたから。
いつか起こるであろう、エニグマとの戦いに負けるワケにはいかない。
エニグマに支配されない、強力な味方が一人でも必要なのだ。
例え、大きな犠牲を強いられたとしても。
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