闇のプレーン


 1:深い森
 この世界は、たくさんのプレーンという平面世界で成り立っていると考えられている。
ウィル・オ・ウィスプがある物質プレーンや、光のプレーン・闇のプレーンもその一つ。他にも未確認のプレーンが数え切れないほど存在している。
 物質プレーンがその名の通り「物質」を主とした世界であるなら、光はもちろん「光」、闇はもちろん「闇」の世界ということになる。


 闇とは?


 彼らは、闇のプレーンに来てから数日を過ごしていた。
光のプレーンでいきなり何者かに襲われて(考えるまでもなくエニグマなのだろうが)、気づいたらこんな世界に来ていた次第である。
だが、「彼」はこの世界に見覚えがあったのだ。

  ずぅぅぅぅぅん・・・・

巨体が倒れ、あたりに振動が伝わった。
「やったぁ!」
快活そうな少女が飛び跳ねて喜んだ。
「ふぅ〜、どうにかだね。なんだか、こっちに来てから、戦ってばっかりじゃない?」
金髪の少年が呟いた。
「仕方ないじゃない、闇の世界なんだから。エニグマにとっては、こっちが本拠地でしょ」
「・・・・でもこんなに戦いが続いたら、いくつ命があっても足りないと思わない?
どこか、休める場所とかないのかなぁ」
彼は空を見上げた。うっそうとした木々のあいだから垣間見えるのは、灰色の薄暗い空。
「ここから東のほうに村があったと思う」
ターバンの少年が言った。
「おお? なんでわかるヌ〜?」パペットの少年が反応する。
「知ってるの・・・?」一番幼い少女も続く。
「ああ・・・・小さい頃に両親と姉と一緒に来たからね。ヴォークス族の村があった」
「行こうよ〜、もう戦うのやだよ。村でおとなしく助けを待っとこうよ」
「そうね、そうしましょうよ。その方がいいわ、うん」
「・・・・・・・・・・・そうだな」
5人は、暗い森の中を東目指して歩き始めた。



「トウチャク〜」
 ほどなくした頃だった。そう遠くない場所に、彼らは現れた。そこは、薄暗い森。
「また森だっぴ・・・・・」小さく呟くピスタチオ。「もう、なんだっていいっぴ。エニグマだろうと何だろうと、出てくればいいっぴ。どうせ、誰も助けてはくれないんだっぴ」
「後ろ向きだわ・・・」
「ショウガネェダロ〜? セサミヲ タスケナイト イケナインダシナ」
「・・・・・今さら聞いても意味ないけど・・・なんでオイラはこんなトコに来てしまったっぴ?
オイラより強い仲間はたくさんいたっぴ。全てはカフェオレのせいだっぴ」
「オイオイ。モンドウムヨウニ コナキャイケナイ オレノ ミニモナッテミロヨ〜」
「カフェオレはオイラよりは強いっぴ。役に立たないオイラがいても、足を引っ張るだけだっぴ!」
「ソコマデイウナラ、ツヨクナッテミロヨ〜。チャンス ジャネェカ。
ガンバッテツヨクナッタラ、キルシュニモ カテルカモシレネェゼ〜」
「シッ! 二人とも、静かに!」
フレイアが木に隠れて様子を伺っている。二人も口論をやめてそれにならった。
「どうしたっぴ?」
「何か、声がしない?」
「コエ?」
耳をすませる。
別段、変わった物音もないようだが・・・・・
「アッ! イマ、ムコウデナニカガ ウゴイタ」
見ると、立ち並ぶ木々の間に見え隠れする、動く影。もしや、エニグマ・・・・?
「気が休まらないっぴ」
「シッ!!」
時折見えるその影は、どうやら二体いるようだ。極端に大きい影と小さい影。
その影たちは、動きを止めた。次の瞬間、魔法の力場が発動し影たちは消えてしまった!
「・・・ワープ ノマホウダナ・・・」カフェオレがうなった。
「あの大きい影・・・見覚えある気がするっぴ・・・」
「行ってみましょう」
木々をぬって、さっきの影がいた場所を目指すフレイアたち。
  どんっ
「きゃっ!!」
いきなり、何者かに横からぶつかられて、フレイアは倒れこんだ。続いて、ぶつかった方も勢い余って彼女の上に倒れこんできた。
「いったーい・・・・」
「・・・てぇ・・・・気をつけろよ・・・!!」
自分がぶつかってきたクセに・・・フレイアは思わず反論した。
「そちらがぶつかってきたんじゃないの・・・!!!」
「え? フレイア?」
「ヘ?」
予想と違う反応に、彼女は改めて相手をよく見ると・・・・・
「・・・・・・カシス・・?」
「なんでこんなとこにいんの?」
「そ、それはこっちのセリフだわ・・・!」
「・・・・・」彼はそのまま横を見た。「カフェオレ・・ピスタチオまで・・・・・どういうことだ?」
「ソレハイインデスガネェ、チョット モンダイガ アルヨウデスナァ」
「問題だって?」
「ダッテ・・・・ナァ、ピスタチオ」
「確かに、ちょっとタイヘンだっぴ・・・」
顔を見合わせる二人。
「なんだよ、感じわりぃな」
「あの・・・カシス・・・・・」
声はすぐ下から聞こえてきた。
「どいてくれると、嬉しいんだけど・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・あっ」
すぐ下で、少し照れた少女がこちらを見ていた・・・。あわてて起き上がるカシス。
「・・・・んだよ、お前ら。ジロジロ見てんじゃねぇよ!! ブッ飛ばすぞ!!」
「ギャヒーーーー!! ボウリョクハンタイッ!!」
「逆ギレだっぴーーーーーーー!!」
逃げ出す二人を追いかけていく少年を見送って、フレイアは体を起こした。
「・・・・・・・・・・・・もう・・」


 一刻後、ようやく落ち着いて一行は話し合いするにいたったわけだが。
「・・・なるほどな。それでこんなトコまで来たわけか」
「カシスマデ イルトハオモワナカッタゼ〜」
「・・・・・・ショコラをさらったドワーフを追いかけて、見つけたはいいんだがちょいと油断しちまってな・・・・。このザマさ。結局ヤツには逃げられるし・・・」
「そうだっぴ!! さっきのあのカゲ、きっとショコラだっぴ!!
オイラ、いつもショコラの近くにいるから、フンイキでわかるんだっぴ!!」
「でも、気づくの遅いわよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
フレイアがイジメるっぴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
カフェオレに泣きつくピスタチオ。
「マァマァ。キット、フレイアモ ストレスタマッテルンダヨ。ダカラ、ウサバラシニダナ・・・」
「そんなフォローしてくれなくっていいっぴ!!!」
「フォローか? 今の・・・・」
当のフレイアはただ黙ってニコニコしていた・・・。
「ソレデ、コレカラ イッタイドウスレバ イインデショウカ」
闇のプレーンに来てはみたものの・・・・どこにセサミがいるのかもわからないし、地理に詳しいものもいない。
「魔バスの修理って時間かかるんでしょうし、それまでに成果でもあげとかないとねぇ」
「・・・・・・・こういう言い方をするのはアレだが・・・・・、なんでこんなメンバーになったんだ? キルシュとかレモンもいただろ」
「オイラは来たくなかったっぴ!! カフェオレのせいだっぴ!!」
「キタエテヤロウト オモッタンダヨ。ピスタチオハ イツモ ニゲゴシダカラナァ」
「こんなときにそんな気遣いしてくれなくていいっぴ・・・・シクシク」
再び泣き伏すピスタチオ。しかし、誰も反応しなかった。
「カシスはどうするつもり? ショコラを追いかける?」
「・・・・・・・・そうだなぁ・・・。ここじゃ一人でいるのはヤバそうだし・・・・手ぇ組もうぜ」
「アリガテェ! カンガエテミリャ コノママジャ、オレガ ヤオモテカト フアンダッタノサー」喜ぶカフェオレ。
「カフェオレがやっぱ最前線だよなー。安心しろ、俺も援護してやるから」
「アア! ソンナ セッショウナ〜〜〜〜!!」
「ふふふっ」
思わず笑ってしまうフレイア。さっきまでの暗い雰囲気が、嘘みたいに明るくなったようだ。
少なくとも、強力な味方が増えたことに違いはないのだから。
「そうと決まれば、いつまでもこんなところにいてもしょうがないだろ。動こうぜ」
「そうね」
改めて回りを見渡すフレイア。空は暗く淀んでおり、何が潜んでいるかもわからない鬱蒼とした森の中。
「・・・・どうしましょ」
「トリアエズ、アルイテイレバ ドッカ タドリツクンジャナイノカ〜?」
「ま、なんとかなるでしょ。今までもなんとかなったしな」
「適当すぎだっぴ。・・・結局、何も変わってないっぴ・・・・・行き当たりばったりだっぴ・・・・」
いじけるピスタチオを尻目に、一行は歩を進め始めた。
この世界に連れ去られた仲間を求めて。




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