光のプレーン
1:始まりの森
まず、光があった。まばゆいばかりの白が目に飛び込んで来る。そして、若々しい木々の緑。ゆっくりと目を開ける少女。そこは、森だった。ここが、光のプレーン・・・・彼女には、それが理解できた。彼女を守護する、光の司る世界。
少女・・・フレイアはとりあえず辺りを見回した。別段平和そうな森。この世界のどこかに、クラスのみんながいるのだろうか? このままこうしていても始まらない。フレイアはアテもなく歩き出した。
適当に歩いていた時だった。
「ぴぃぃぃぃぃーーーーーーーーっっ!!」
突如、カン高い悲鳴が響き渡った。聞き覚えのある声。フレイアは急いでそちらに向った。すると、さっきの魔物・・・エニグマに追い回される、犬族の少年の姿が。
「助けてくれっぴーーーーー!! オイラはおいしくないっぴーーーーーっ!!」
ピスタチオだ!
「ピスタチオ!」
呼びかけるが、追い回されてパニックなピスタチオには聞こえていないようだ。
「ピスタチオってば!!」
「ぴぃぃぃぃぃ! 新手だっぴ! ああ、もうダメだっぴ・・・短い人生だったっぴ・・・こんなところで魔物のエサになるなんて・・儚い人生だっぴ・・・・」
「ピスタチオ!!」
「ん??」
おびえきった目が、見る間に希望の光を宿していくのがわかった。
「フ、フ、フ、フレイア!! フレイアだっぴ!! 良かったっぴ〜〜〜!! 今から、コイツと『戦う』ところだったっぴよ!! さぁ、フレイアも一緒に・・・!!」
「頑張ってね、ピスタチオ」
「イジワルゆっちゃイヤだっぴ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「冗談よ」
フレイアは魔法を構成し始めた。実戦で魔法を使うなんて初めてだが、やるしかない。ピスタチオは戦えないのだから。
向ってくるエニグマに狙いを定めて・・・発動!
(スターライト!!)
眩い光が、エニグマを包み込む! 先生の魔法ほどの威力はないものの、闇の魔物なら光の魔法は弱点になるはず。光が失われたあと、そこには何も残らなかった。
「やった!」
「すごいっぴーーーーーー!! さすがフレイアだっぴーーーーー!!」
ピスタチオが抱きついてくる。フレイアもホッとして思わず座り込んだ。
「・・ピスタチオ、無事だったのね・・・・」
「死ぬかと思ったっぴ! あのヘンテコな魔物に追いつかれた時は、どうなるかと思ったっぴ!」
やはり、みんな光のプレーンに来ているのだろう。しかし、何のためにあの魔物はこんなことを・・・?
「ピスタチオ、他のみんなは見なかった?」
「知らないっぴ」
「そっか・・・。じゃ、とりあえず行きましょうか」
スッと立ち上がるフレイア。
「い、行くって、どこに行くんだっぴ?」
「他のみんなを探しにいくのよ。とーぜんでしょう」
「わ、わかったっぴ! オイラ、フレイアについていくっぴ! でないと、またアイツに追い回されるっぴ!!」
「りょうかーい。行くわよ!」
「おーーーーーーっ!!」
魔法大国と呼ばれるコヴォマカ国では、魔法学校ウィルオウィスプで少年少女に魔法を教えている。魔法とは、各人の守護精霊の力を魔力で構成し発動させる術。使い方さえわかれば、基本的に誰でも魔法を扱うことができるのだ。学校では、その使用方法と応用方法、理論等を教えている。勿論、学校の生徒はそれぞれの力量に応じて魔法を扱うことができる・・・殆どの場合。
魔法をどのように構成するかは、個人それぞれなので、魔法の発動にも個性が現れる。クラスメイト達も、それぞれオリジナルの魔法を構成している。・・ただ一人を除いて。
「ところで、フレイアどの!」
「なぁに?」
「どちらに向っているんでありますか!」
「さぁ」
「・・・・・・どーゆーことだっぴかーーーーー!!?」
「だって」フレイアは肩をすくませる。「どこに何があるかなんて、私にもわからないもの」
「・・うう、確かに・・・・・ちょっと待つっぴ!」
ピスタチオはハナをクンクンときかせ、辺りの様子を調べた。
「・・・んー・・・、こっちの方からアランシアのニオイがするっぴ」
西の方に鼻をかざして呟くピスタチオ。
「なら、行ってみましょうか」
「お〜〜〜〜〜〜〜、イエ〜〜〜〜〜〜〜ッス!!」
二人はとりあえず、他のクラスメイトを探すために西へと向った。
しばらく西へ向うと、ポッカリと開いた洞穴の入り口が見つかった。近くに立て札も立っており、『ワクティ村→』と書いてある。
「村があるみたいよ」
「おーーー! ・・・でも、ここを通らなきゃいけないんだっぴ・・・?」
「アランシアがいるかもしれないんでしょ?」
「そうだっぴ! 行くしかないっぴ!」
二人はゆっくりと中に進入していった。内部は所々に明かりが備え付けられており、思ったほど暗くはなかった。そして、やや進んだところで見覚えある後ろ姿に遭遇した。ロングヘアの少女の姿。
「アランシアだっぴ!」
ピスタチオの声に、彼女は振り向いた。
「アランシア!」
「・・・無事だったんだね・・」アランシアは割と冷静だった。
「・・・・・・?」
なんとなく、フレイアは違和感を感じた。
「こっちの方にもう一つ出口があるから、ついて来て・・・」
と、アランシアはスッと歩き出した。
「ああっ! 待ってくれだっぴ!」
あわててピスタチオが追いかけ、フレイアもそれに続いた。
しばらく歩いたところで、アランシアは立ち止まった。
「どうしたっぴ?」
「別に・・・たいしたことじゃないよ・・・・」
「・・・・」
フレイアは、辺りを包む異様な空気を感じた。そして、アランシアにまとわりつく、フレイアにとっては不可解な影。
「・・・ニルヴァ・・・・・?」
「!!」
アランシアの顔が恐ろしく歪んだ。あまりの形相に驚いて、ピスタチオはフレイアの後ろに隠れた。
「・・・・・見えるのか、お前・・・」
同時に、周囲から邪悪な空気が湧き上がった。いつの間にか、3人を囲むようにモンスター達が集まっていた・・・・。
「・・あなた、アランシアじゃないわね」
「?? どういうことだっぴ??」
「くくく・・・。光か・・悪くないな、お前・・・。我と融合しろ。そうすれば、さらなる力が手に入るぞ・・・」
「・・・・融合?」
「簡単だ・・・お前の体を我に差し出せばいい。痛みはない。お前と我は一つになるのだ・・」
「・・・・・・・・・」
「わかっているだろ? それ以外にお前の選ぶ道はない」
冷や汗が流れた。周囲をモンスターに囲まれている以上、逃げ出すことなどできないだろうから。断れば、一斉に襲い掛かってくるのだろうか。今の状態では、戦って打開する方法は不可能に近いから。しかし。
「ヒートフォンデュ!!」
救いの声は近くから現れた。モンスターの一角が炎に包まれる。
「大丈夫か!?」
「いや〜ん、モンスターだらけ〜」
声の主は、キルシュだった。そして、その後ろにはアランシアの姿。
「本物だわ!」
「やだ〜、私、あんななの〜?」
偽者を見て、アランシアがこぼす。一方、偽者のアランシアは、
「ぬぬ・・・こうなれば、力ずくで!」
姿を変え、正体を現した。海岸に現れたエニグマよりも強そうな風貌のエニグマだ。
「戦うぜ!!」キルシュが駆け出した。「ピスタチオは下がってろ! アランシア、フレイア、援護してくれ!」
「わかった〜」
「了解!」
「ひぃぃぃぃ、助けてくれっぴ〜〜〜!!」
ピスタチオが転がるようにアランシアのさらに後ろに逃げ込む。こういうとき彼は、逃げ足だけは誰よりも速い。
キルシュ、アランシアが魔法を構成する。火が得意なキルシュはモンスターを片っ端から燃やし尽くしていた。一方のアランシアは音の魔法使い。
「・・・・(魂のレクイエム!)」
静かな音が辺りを包み、モンスター達の動きが止まる。彼女は音を使って相手を眠らせるのが得意だ。フレイアはエニグマめがけて魔法を放つ。さすがに、さっきのように一撃ではいかないようだ。
「・・くぅ・・貴様ら・・・・・!」
一方のエニグマも魔法を構成し始めた。
「闇魔法だわ!」
「させるかよっ!!」
キルシュがエニグマのふところに飛び込む。
「危ないよ〜!!」とアランシア。
「フレイア! もう一発かましてやれ!!」取っ組み合いながら叫ぶキルシュ。
「で、でも・・・」
「オレは大丈夫だ!」
「クッ、このガキ・・・・・!!」
エニグマがキルシュめがけてその大きな腕を振り下ろす。すんでのところでかわす。その時、フレイアが魔法を放った。急いでキルシュが離れる。
「スターライト!!」
「ぐっ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
激しい光と咆哮。耐えられず、ヤツの体は光の中に消え去った。
「やったっぴ!!」
「やった〜! 倒したよ〜!!」
ピスタチオとアランシアが駆け寄ってきた。
「ふぅ、やれやれだぜ」座り込むキルシュ。
「もう〜、キルシュ〜! あんまり心配させないでよ〜!!」
「いいじゃんか、倒せたんだし」
「もう!」
フイッと横を向くアランシア。
「キルシュたちも、アイツらに連れてこられたんだっぴ?」
「そうよ〜。怖かった〜」
「探検し終わって洞窟から出てきたら、ヤツらがうじゃうじゃいやがってよ。一緒に行ってたブルーベリーやらも連れてかれちまって。オレ一人になっちまった後にガナッシュ達に会ってさ。あいつら、連れてかれちまったみんなを助けるために、ワザとヤツらについてくつもりだって言ってたからよ、オレもそうした」
「ワザと・・・」とフレイア。
だから、ガナッシュ達までどこにも居なかったのか。無茶というか何というか・・・・。もっとも、自分だって自らの意志でここにいるのだ、人のことは言えない。
「とにかく、みんなを探そうぜ! きっと、このプレーンのどっかにいるはずだ!」
「アバウトだわ〜」
「わかったっぴ!!」
強力な味方が増えた。フレイアは心底ホッとした。ピスタチオと二人というのは、「戦う」という点において非常に不利だったから。
「・・ところで、ピスタチオ」
「なんだっぴ?」
「やっぱ魔法は使えねぇのかよ」
「うぐっ・・・! そ、それは・・・・だって・・・・苦手なモノはどうしようも・・・・・」
胸の前で指をいじいじするピスタチオ。ハァ、とキルシュは溜息をついた。フレイアに向き直り、
「大変だったろ、フレイア」
「・・・んー・・・まぁ・・・」
「フレイア! フォローしてほしいっぴ〜〜〜!!」
ピスタチオは、魔法をほとんど使えない特異な生徒なのだ。才能自体はあるんだろうが(グラン・ドラジェがスカウトしてきたのだから)、他の生徒のように魔法を自在に扱うことはできずにいた。ゆえに、学校も落第寸前なのだが・・・・。
「とにかくここから出ようよ〜。ここ、暗いしジメジメしてるし、またモンスター出るかも〜」
アランシアの提案で、4人はひとまず洞窟の外に向った。
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