死のプレーン
11:虹
『・・・・・・ということよ。わかった、みんなー?』
『でも先生・・・・・本当にそんなこと可能なんですか? 虹のプレーンの力を生み出すなんて』
『どうかしらねー。なんせ、誰も成功させたことがないんだものね』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『ここだけの話、校長先生もずっと研究しているけど、どうしてもうまくいかないんですって』
『ならダメじゃねぇかー』
『そうですのー! グラン・ドラジェにもできないなんて、そんなの絶対ムリですのー!』
『本来、まったく違う性質の力を融合させる・・・・・・魔法の力以外の、何かが必要なのかもしれないわね』
少年はひとりごちた。
「奇跡・・・・か。
でも、本当はそんな言葉、何の意味もないものなんだろうな。どんな奇跡も、不可能でなければそれは奇跡にはなり得ないんだ」
「・・・・・虹・・・・・だって?」
思わず呆然と、キルシュが呟いた。いくら彼だってその言葉の意味は理解できた。
「ああ、そうだ」
「・・・・って、ガナッシュ! それって、前、先生が言ってたよな!
グラン・ドラジェでもうまくいってないって・・・・」
「ああ、そういえばそう言ってたかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんなの・・・・ムリだ。奇跡だなんて・・・・・程がありすぎる。
誰もがわかっていた。
「・・・・ムリだって思っていたらいつまでたってもそれは幻だ。
やれると信じれば、きっとやれるさ。・・・月並みだが」
ガナッシュは天を仰いだ。薄暗い、空も見えない場所。
遠い遠い世界から、見守ってくれている人々がいる。応援してくれている。
・・・・・頑張れる。
「論じてても始まらないわ」ブルーベリーが呟いた。「やるだけやってみましょうよ。その後のことはその後でもいいじゃない」
「でも、どうやればいいんだよ? テキトウにやってもまず無理でしょ」とシードル。
「この本にきっと書いてあるはずだわ」
図書室から持ち出した本をめくってみる。そして。
「みんな、聞いて・・・・・!」
「フレイア。君は、奇跡を信じるかい?」
不意に問われ、びっくりして思わずガナッシュの顔をまじまじと見てしまうフレイア。
となりにはペシュの姿も。
「ガナッシュちゃんは信じてますの?」
「いいや」
「・・・・・・・・・・・・ミもフタもないですの・・・・」
「正確には、信じてなかった・・・・かな。でも、実際に体験してしまえば、イヤでも信じるさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ケルレンドゥの一件のことか・・・・・フレイアは顔を曇らせた。
「果して、今の俺に奇跡が起こせるのかな・・・・・魔法もほとんど使えないのに・・・・」
「ガナッシュ・・・・・信じましょう、自分を」
「・・・・そうだな」
「信じる・・・・ステキな響きですの〜・・・・・」
信じて力をあわせれば、きっと奇跡だって生み出せる。
彼らは、何時の間にか不思議な場所にいた。
何とも表現しがたい、不思議な空間。そこに存在している、彼ら。
そして、そこに渦巻く不思議なちからもまたそこに。
「・・・・!?」
ガナッシュは不意に目の前にいた小さな存在に気づいた。
一つ目のギョロっとした、小さな生き物のような不思議なモノ。
何かに似ている。前に見たことがある。
「きゃーーー!! すごいですのーーー!!」
そんな思考はペシュの明るい声にかき消された。
見ると、ペシュの近くにハートのような形の何かが浮かんでいて、それを見た彼女が騒いでいる。
まさか。
「見えたの?」
フレイアの声に、今度はそちらを見やるガナッシュ。
彼女のそばには、薄いベールをまとった小さな姿が。
「・・・・・・・、こ、これは・・・・・」
「見えているのなら、きっとそれが奇跡なのね」
「・・・・・?」
「彼らはいつだって私達を見てくれている。そして、私達に語りかけようとしている。
でも、多くの人は彼らのささやきに耳を貸さない・・・・・だから、奇跡なんて起きやしない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも」
彼女は周りを見た。ガナッシュも見た。
周りにいたものは、まさに奇跡だった。
「すげー! なんだこりゃあ!」
嬉しそうな驚いたような口調で叫ぶキルシュの横には火の玉みたいな小さな姿。
「すごい・・・・おばあちゃんが言ってたとおりだわ・・・・」
ブルーベリーの肩にのっかっているライオンみたいな青い姿。
「初めて見た〜・・・・・・かわいい〜・・・・」
アランシアのそばには音符のような形の小さな姿。
「な、な、な、なんだっぴかーーーー!? 浮いてるっぴ! 動いてるっぴーーーー!!」
絶叫するピスタチオの真上にどんぐりみたいな姿。
「ムシーーー!! ムシーーーーーーー!!」
興奮して追い掛け回しているセサミと追い掛け回されているカブト虫のような小さな姿。
「少し落ち着けよ、セサミ・・・・・ムシじゃねぇだろ」
呆れるカシスの隣にはヒゲを生やした小さな姿。
「ホウ、コレガモシヤ、チマタデウワサノ・・・・」
カフェオレの近くには小さな老人のような姿。
「へぇ、こんなカッコなんだ・・・・・ヘンなの。・・・・・ってうわっ! ゴメン!」
正直に呟いたシードルに怒って(?)つっかかっている光り輝く姿。
「カワイイ・・・・・」
オリーブのそばには、緑色のクマみたいな小さな姿。
「あっはっは、結構愛嬌あるカオしてんじゃないか」
何やら意気投合しているレモンとナマズみたいな小さな姿。
「面白ければいいって話じゃないヌ〜・・・・・微妙だヌ〜・・・・」
少し引いているカベルネのそばにはへしゃげたカオの小さな姿。
「おーなーかーまー」
ショコラのそばにいる、石みたいな小さな姿。
「・・・・やっぱりアナタだったんだ・・・・・・・・ありがとう・・・」
小さな鳥のような姿を手にいただいて、キャンディが呟いた。
それはちっぽけな大きい奇跡。
「な、なんだ、この力は・・・・・・!?」
ケルレンドゥがどことも知れぬ顔をゆがめた。
目の前の子供達から・・・・いや、その空間から、異様な力が発せられ彼の動きを束縛していた。
『虹というものは』
ベールをまとった小さな姿が呟いた。
『一見七色に見えますが、そこには無数の色が存在しています。
全く違うものが、一つの虹を形成している・・・・・・それが、虹の力なのです』
彼らは誰からともなく魔力をひとつに集め始めた。
全く違う力を、一つのものに形成するために。
「愛を感じますの〜・・・・すごいですの〜・・・・」
集まった力は、不思議な空間の中で虹となった。
「なっ! なにっ・・・・・・・・・!! これは・・・・・光・・・・・・・・・・・・・・・・!!?
・・・・・・・・・・・・・・ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・・・・・・・・!!!!」
「・・・・・・・・・・・!」
大きな力を感じて、老紳士は空を見上げた。
「・・・・そうか・・・・・・・終わったのじゃな・・・・・・・・何もかもが」
長く、誰にも知られない戦いが。
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