エピローグ
「それじゃあ、この紙に書いて明日までに提出してね〜忘れちゃダメよ〜」
同時に終業の鐘が鳴った。
生徒達はいっせいに立ち上がって、次々と教室の外へ出て行った。
「はぁ・・・・もう近いんだね・・・・・卒業が」
頭を抱えながら、ネコ耳の少女が青い髪の少女に近づく。
「そうね・・・・早いわね」
「ねぇ、ブルーベリー」
「なに、レモン」
「アンタさぁ、大人になったら何になりたいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
ブルーベリーは押し黙った。レモンは彼女の次の言葉を待った。
「・・・・・・水の・・・プレーンに行って色々研究したいな・・・って思ってるんだけど・・・・・・・」
「へぇ、いいじゃないか」
「・・・・・・うん・・・・でも・・・・・」
「でも、何?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ううん、なんでもない。帰りましょう、レモン」
「ああ、そうだね」
変わった。ブルーベリーは。
今まで色々と後ろ向きだったけれど、前を見て生きていけるようになった。
それがレモンは嬉しかった。
「卒業かぁ・・・・・・」
「キルシュ、大丈夫〜?」
「なにがだよ」
「卒業できるの〜?」
「なっ! バカにすんなよアランシア! ったく、ピスタチオじゃあるまいし・・・・」
「ヒドイっぴーーーーーーーーー!!」
「ま、仕方ねぇよな。良かったな、カラマリィに手加減してもらって」
「そんなんじゃないっぴーーー! 実力だっぴーーーー!!」
廊下を歩きながら、キルシュ達もまたこれからについて色々考えていた。
「なーんも考えてねぇんだよなー・・・・・明日までに出せなんて、ムリだぜ」
「私はどうしよっかな〜・・・・・」
「大体、まだんなこと考えたことねぇっつの・・・・まだ15だぜー、先のことなんかわかんねぇよ」
「やっぱり音楽家がいいかな〜・・・・・・ああ、でも、およめさ・・・・きゃ〜〜〜!!!」
二人並んで話しながら歩いているキルシュとアランシアを、後ろから眺めるセサミとピスタチオ。
「・・・・・何気に会話・・・・かみあってねぇよな」
「でも仲いいっぴ〜」
「・・・・・そう見えるかー?」
「見えるっぴ〜」
「ま、アニキもまんざらじゃなさそうだしな〜・・・・あーあ、アニキがいなくなったら寂しくなるなぁ〜・・・・」
「オイラがいるっぴ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「その沈黙はなんだっぴーーーーー!!」
「コンナ コダイキカイデモ、ショウライノキボウヲ ユメミテモ イインデショウカ・・・・・?」
「ガンバですの! カフェオレちゃん!」
「ショコラハ ショウライノコトナンテ ナニカカンガエテルノカ?」
二人はショコラを見つめて黙った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・んー?」
そしてガクッとこける二人。
「キクダケ ムダダッタ ミタイデスナ」
「そ、それくらいがショコラちゃんらしいですの〜」
ペシュはそう言ってショコラの肩に乗った。
「カフェオレちゃんはグラン・ドラジェのお気に入りですの〜。きっと、グラン・ドラジェがカフェオレちゃんを必要としますの!」
「200ブラー デカワレテモ オキニイリナンデスカ・・・・?」
「イジけないでくださいですの」
「コレカラノオレハ ジリツシタ ジンセイヲオクロウト オモッテイルワケデスヨ。ダレニモタヨラズ イキテイクトモ」
「かっこいいですの! カフェオレちゃん!」
「かっこいいー」
「フ、ソレホドデモ アリャシマセンゼ。オレニ ホレルナヨ」
「カシスもいなくなってしまうヌ〜、さびしくなるヌ〜」
「ていうか、あんだけサボっててよく卒業できるよね、ネマワシしてんじゃないの」
「てめぇ、言いたいことはそれだけか、ああん?」
いつもの帰り道、いつもつるんでいる3人で仲良く下校。
でも、もうすぐ卒業。
「カシス、これからどうすんの」とシードル。
「旅にでも出るかな」とカシス。
「まだ旅するんだヌ〜? 好きだヌ〜・・・・」とカベルネ。
「お前、あのキャンプの話かよ? あれとは全くベツモンだろうが」
「オイラはもうコリゴリだヌ〜」
「同感だね。大体ボクは非アウトドア派なんだから、アトリエにでもこもって絵描いてる方が数倍いいよ」
「俺はそういうのだけはお断りだな」
「芸術性がないんだから」
「なくてもいい」
「だから、キミって人は・・・・・!」
「まぁまぁ、落ち着くヌ〜」
けんか腰になりかけた二人をなだめてみるカベルネ。
「カシス、旅に出たらなかなか会えなくなるヌ〜・・・・」
「そんな長旅はしねぇよ。オフクロ一人ほっとくのも気が引けるし。それに」
「それに?」
「・・・・・・・・・・・・・なんでもない」
「なんだヌ〜!! なにが『それに』なんだヌ〜!! 教えるヌ〜!!」
「言うまで離さないからね!」
「うわわっ! 離れろ! くっつくな! あっちいけよ!!」
「最近、ガナッシュったら上の空なのよねー・・・・何かあったのかな・・・・」
教室の窓際でいつも窓の外を眺めているガナッシュを、キャンディはいつも心配そうに見ていた。
「何があったのかしらね」答えたのはフレイア。
「はぁ・・・切ない。切ないといえば、ガナッシュも卒業しちゃうんだよね〜・・・・はぁ〜・・・・・・」
「そっか・・・・・」
それがキャンディにとって一番大きな問題なわけだ。
「はぁ〜・・・・ガナッシュがいなくなっちゃったら、これからどうやって生きていけばいいのかしら〜・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ちょっと返答に困るフレイア。話題を変えてみることにした。
「ねぇ、キャンディ。キャンディは将来何したいとか考えてる?」
「私? そうねぇ・・・・・普通に魔法使いになろうと思ってたんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・あ・・」
キャンディは今、魔法が使えないのだ。あのキャンプ以来、ほとんど。
「もうムリかなー。ま、仕方ないよね」
「・・・・・・・・・・ごめん・・・・・・」
「あら、何あやまってんのよー。いいのよ、もう割り切ったから。
ねぇねぇ、フレイアは何になりたいの?」
「私は・・・・・その・・・・・・・・・」
「もーぅ、もったいぶらないで教えなさいよー」
「・・・・先生になりたいな・・・・なんて」
「へー! 素敵じゃない! 向いてると思うわよ」
「ありがとう・・・」
そのとき、彼女たちに近づいてきた者がいた。
「あの・・・・」
「あ、オリーブ・・・・」
キャンプで一旦険悪になりかけたキャンディとオリーブは、その後仲直りして今では普通に友達である。
だからなのだろうが。
「キャンディ・・・・・キャンディには言っていいよって言われて・・・・あ、あの、その」
「何? 言っていいよって、どういうこと?」
「あのね・・・・・・」オリーブはうれしそうに告げた。「ガナッシュ・・・・・お姉さんに会えるんだって・・・・・」
「全てが闇へ消えて行った・・・・・これからもこの国の人々はエニグマの存在すら知らずに暮らしていく・・・・・
これで良かったんじゃ・・・・・・」
どこまでも晴れ渡る空を見上げて、グラン・ドラジェはつぶやいた。
全ては終わったのだ。
「あの少年には、大変な思いをさせてしまうが・・・・・」
「校長先生」
「おお、マドレーヌか」
「これで・・・良かったんでしょうか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ガナッシュは受け止めてくれたけれど・・・・・でも・・・・・・」
「仕方ないんじゃ、やつらをまとめる『ケルレンドゥ』の存在は必要なのだから・・・・・
そして、彼は・・・ガナッシュはそれを受け入れてくれた。これからも『ケルレンドゥ』は彼の中で生きていく。
姿無き存在として・・・・な」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな顔をするんじゃない。・・・・・・こうするしか、我々にも道が無かった・・・・・・悪いとは思っておる」
黙って、マドレーヌは首を横に振った。
「・・・・あの子一人に何もかも背負わせてしまうしか、方法がないなんて・・・・・それが辛くて・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
空はどこまでも晴れ渡っていた。
まるで、何も知らない人々の心のように。
あの夏のキャンプファイア。
いっぱい大変なことばっかりだったけど。
みんなで過ごした大切な瞬間は確かにあの時そこにあった。
それだけは、いつまでも変わらずに彼らの中に在り続ける。
「姉さん。
何もかもなくしちゃったよ。
でも、満足してる」
The End...
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