闇のプレーン
10:集結
クガンデ村を出立したフレイア達は、一路北・・・・バソリモ村を目指して進んでいた。
ガナッシュ達に遅れること、約3日。もうガナッシュ達はバソリモ村に到着しているだろうか。
それとも、村にはいないのか・・・・・
勿論、彼らはガナッシュ達の間に何が起こっているかなど知る由もない。
ただフレイアは漠然と、イヤな予感がするだけだった。
森から次第に山岳地帯へと風景は変わっていく。山のふもとにバソリモ村はあった。
「おーーーーー! やっと見えたっぴーーーー!!」
「やっとー? 疲れた〜・・・」
睡眠や食事を取る時間以外は、ほとんど歩き通しだったため、皆の疲労は相当なものだった。
村に着くなり、早々に宿に直行するお子様3人。フレイアは村に入ってすぐに座り込んでしまう。
「フレイア、ツカレタンダナ」カフェオレがゆっくりとやってくる。
「うん・・・・ちょっと」
「ムリモナイネェ。コウイウトキハ、キカイノカラダガ ウラヤマシクハ ナイデスカァ?」
「・・・・・・・・・・・ほんのちょっと」
「ホンノチョットダケデスカー・・・ハァ」
「この村から向こうはもう村はねぇみたいだな」地図を見ながら歩いてくるカシス。
「・・・・トイウコトハ・・・・」
「この村にガナッシュ達がいるってことだろ。・・・・ま、さらなる冒険に出てなければって話だけど」
「おーーーーーーーーーーーーーいっ!!!」
と、村の奥からセサミとピスタチオが転がるように走ってきた。
「どうしたの?」
「タイヘンなんだっぴ!!!」
「大変って、何が?」
「あーーー、とにかく、来てくれよ!」セサミはフレイアの服の袖を引っ張る。
「イコウゼ、フレイア」
言われるままに、宿屋にやってくるフレイア達。
そこには・・・・仲間がいた。・・・・二人だけ。
「カベルネ! オリーブ!!」
「おーーー、フレイアだヌ〜」
嬉しそうではあったが、カベルネの表情はどこか暗かった。
「オリーブ、カベルネ、元気そうだな。・・・ガナッシュとキャンディは?」
『・・・・・・・・・・・』
「・・・どうしたの?」
「とにかく、話を聞いて欲しいヌ〜・・・」
カベルネとオリーブがこの村に来たのは3日前。勿論、ガナッシュとキャンディも。
でも、彼らは二人だけで山岳地帯に踏み入ってしまったこと、彼らはついて行けずにここに留まっていたこと、そして・・・・・
「昨日、先生がこの村に来たんだヌ〜」
『先生が!?』
やっぱり先生はこのプレーンにいたんだ、とフレイアは即座に思った。
「ガナッシュ達のことも全部話したヌ〜。そしたら先生、必ず助け出して来るって・・・」
「・・・・・行っちゃった・・・・・」
「マジですか・・」とはシードル。
「タイヘンジャネェカヨ! スグオイカケヨウゼ!!」
「そ、そうだよな、先生もシンパイだよな・・・・!」
「待って・・・」
オリーブが、おもむろに語り始める。
「ガナッシュ達もそうだし・・・・・先生もそうだけど・・・・・・・
もっと大変なことになってるかも・・・・・しれない・・・・・」
『もっと大変なこと?』
数人が同時に声を発した。オリーブは言おうかどうか迷っていたようだったが。
「ハッキリとはわからない・・・・。だから、先生にも言えなかったんだけど・・・・・・・・
でも、放っておいたら、もっと大変なことが起きそうな気がする・・・・・・」
「もったいぶらねぇで、はやく言えよぉ」セサミがせっつく。
「それは・・・・・・」
と、オリーブはふと宿の入り口を見やった。
「その事情、どうせならみんなの前で話してくれるかしら、オリーブ・・・」
聞きなれた、頼もしい女性の声。みんなが、一斉に振り向いた。
宿の入り口に立っていたのは、あの海岸以来消息不明だった、女性・・・・マドレーヌ先生その人だった。
「先生ーーー!!」
「久しぶりね、みんな」
子供達はほぼ反射的に先生に群がって抱きついた。中には泣き出す者も。
「先生〜〜〜〜〜・・・・・グスッ」
「怖かったっぴ〜〜〜〜〜!」
「先生、ガナッシュ達はどうなったヌ〜!?」
「・・・・・」彼女は少し顔を曇らせた。
「先生」カシスが言う。「・・・『みんな』って言ったよな、さっき・・・」
「・・・・・・・ええ、今もお待ちかねよ」
同時に、外からなにやら賑やかな物音が聞こえてくる。
「先生ーーーー!! こんなとこにいたのかよ!!」
「待ちくたびれましたの!」
「せんせいー」
さらに、彼らは目を見開いた。
まず現れたのはクラスのガキ大将キルシュにペシュ、後ろにそびえ立つ巨体はショコラ。
「あ。みんないるじゃんか」
「やっと追いつきましたのーーーー!」
幻ではない。フレイアはカフェオレらと顔を見合わせる。
学校で魔バスの修理を待っていた仲間達が、追いついてきた!!!
「で、でも、なんでショコラもいるんだっぴ??」
「それも説明するわ」マドレーヌが微笑んだ。「みんな、魔バスに戻りましょう」
無論、反対する者などいなかった。
学校に残っていた5人(+バルサミコ)と、何故かいるショコラと合わせて、16人。
当初このバスに乗ってキャンプに向ったメンバー18人のうち、ここまで集まっていた。
・・・いないのは、ガナッシュとキャンディ・・・・・。
「えー・・まず、どっから話したらいいのかしらねぇ・・・・・・」
「なんでショコラも一緒なんだ?」
「・・・それはねぇ・・・」マドレーヌは少年を見やる。瞳にやや、怒りにも似た色をおびている。
「私は最初、村を出たっていうガナッシュ達を追おうとしたんだけど」
「なんでガナッシュ達が村を出るの?」つい、自然な疑問を口にするブルーベリー。
「まぁまぁ、順番に行きましょう。
ガナッシュ達を追って山岳地帯に向ったはいいんだけど、正直どこに行ったのかわからなくてねぇ。そんな時、ショコラを見かけたのよ。
一人かと思ったら、どうやら望まれない同伴者がいたみたいでね。私を見るなり、ショコラを連れて逃げ出したわ。
私は彼らを追うことにした。そしたら、魔バスとハチあわせよ。驚いちゃった。
聞けば、魔バスも今来たばっかりだって言うし、丁度良かったからショコラを追いかけてもらったの。
あのドワーフ、モルビエ火山にショコラを連れて行ったわ。
・・・これは推測だけど、あのドワーフ・・・エニグマは、ショコラを炎で脅かして融合しようとしたんじゃないかしら」
「なんで?」
マドレーヌはショコラを見た。当のショコラはやはり事態を把握しているのかしていないのか、マイペース。
「マッドマンは、とても頑丈でしょ。でも、炎には弱いのよ。そうやって脅かして融合する気にさせようとしたんでしょうね・・・・・」
それすらもショコラには効いてなかったみたいだけど、と彼女は付け加えた。
「・・・そのエニグマはどうしたんだよ」
「ちょっと脅かしたら逃げちゃったわ」
「・・・・・・・・・わかった」
全然納得してない表情で呟くカシス。
「じゃあ先生、ガナッシュ達のことは・・・・・」
「それに関しては、私よりオリーブ達の方が詳しいんじゃないかしら」
みながオリーブに注目した。
「・・・あ・・・・・・私・・」
「大丈夫よ、オリーブ」フレイアが彼女の肩に手をおいた。
「・・・・・・・・・うん・・・・・あの・・・・、もしかしたら、なんだけど・・・・・・
キャンディのことなの・・・」
キャンディの名前にピクリとキルシュが反応した。
「この村に向う途中で、一回だけキャンディが一人きりになって・・・・・その時かもしれないんだけど・・・・・・・・・・
キャンディ、取り憑かれてしまったのかも・・・・・・」
「取り憑かれて・・・・・って」
誰かが反復した。でも、この場にいる全員が感づいていたに違いない。
・・・・・エニグマ。
「・・・・・・まずいことになってきたわね・・・」思わず、マドレーヌも呟いた。
「せんせー」今まで無反応だったショコラが声を上げる。
「なぁに、ショコラ?」
「ガナッシュとキャンディ、さっきみたー」
「え!?」
「あなにはいっていったー。おおきなあなー」
「・・・・・・」
考えをめぐらすマドレーヌ。ガナッシュとキャンディ・・・・エニグマ・・・・穴・・・・闇のプレーン・・・・様々な要因が、彼女の中で次第に一つに繋がっていった。
「・・・・・・・・・・・・・・どうやら、事情が段々とつかめてきたっぽいわよ・・・・」呟くマドレーヌはうっすらと汗をかいていた。「・・・正直、こんなことになるなんて思ってなかったけどね・・・」
彼女は考えた。仕組んだ校長も、こんな事態は予測していたのだろうか?
だとしたら、校長も恐ろしいまでの大博打を打ったものだ。
マドレーヌは決断した。
「バルサミコ、至急東に向って欲しいの。目的地は、キスニカ鉱山」
「はいよ、任せときなっ!!」
『うわぁぁぁっ!!』
バスが急発進し、みなあおられて倒れこむ。
道なき道を、魔バスが突進していく。
「先生・・・・・・」
不安な表情を見せる生徒達に、彼女は微笑んだ。
「みんなにも、事情を知ってもらわないといけないわね。・・・・・本当の事実を・・・」
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