「僕の村って僕以外大人ばっかりだったからなー、そういうのはいなかったかな」

「あの孤児院に引き取られた当初はたくさんいたんですが・・・・・・でも・・・・・・・」

「荒野をさすらう渡り鳥だからな。一時の関係はあっても、長く続かないんだよなこれが」

「幼い頃に町も、何もかもを失った・・・・そう呼べるものも、その時に失ったのだろうな・・・・」




Friendship







 それはある日のこと。
「それは僕が取ってたやつじゃないかッ! 返せーッ!!」
「もう食べちまったもんねー。ご愁傷様」
「食べ物の恨みは怖いんだからなッ・・・! ・・・えいッ」
「うおあッ! こらおい! そりゃせっかくラクウェルがよこしてくれた・・・ッ!!」
「もう遅いもんねー。戻そうかー?」
「汚ぇなッ! やめろって!」

 いつもの風景、いつもの食事。
薄暗い食事処の片隅で、メンバー内でもとりわけ騒がしい青年と少年が賑やかに盛り上がっていた。
「・・・・お前たち、他の客に迷惑だぞ・・・・・」
呆れたようなまなざしでたしなめる、メンバー最年長の女性。
しかし、じゃれあいは止む気配もない。女性はため息をつく。
「やめさせるか」と、剣を手にする。
「ら、ラクウェルさん・・・、ここは穏便に・・・・」
女性の方をたしなめるのはまだ幼さの残る少女。
「だが、こうも騒いでいては店にも客にも迷惑だろう」
「だからって、剣で解決することはないじゃないですか・・・・・言えばわかってくれますよ」
「そうか・・・・?」
「そうですって! ・・・・・でも」少女は、微笑ましそうに男の子連中を見やった。「楽しそうです」
「・・・・・・・まぁ、な」
「よく言い合いしてるの見ますけど、きっと仲が良いんでしょうね」
「・・・・仲が良い・・・・・か・・・・、そうかもしれんな・・・・・」



 また別のある日のこと。
「・・ですから、ここでこれを入れるから妙な方向に行くんですよ」
「だ、だが・・・・ユウリィ、この前はこれを入れていただろう」
「兼ね合いってものがあるんですよ・・・! 何にでも相性があるように、食材にも相性があるんです!」
「・・・・そ、そうか・・・・いまいち、その機微がわからなくてな・・・・・」
「・・・・ラクウェルさん、自分で味見とかしないんですか?」
「しないことはないのだが・・・・しても、どうやったら違う味にできるのかがよくわからぬ・・・・」
「違う味とか、そういうんじゃなくて・・・・・どう混ぜたらどういう味になるかっていうのを、自分で確かめないとダメなんですってば」
「・・・で、失敗した時は?」
「・・・・・・・・・違う味にしないといけませんけど」

 いつもの風景、いつもの食事。
今日は野営で、メンバーの女性陣が食事の支度を行っていた。
「お、いい匂い。今日は何だろなー」
「・・・・あんまり期待はしない方がいいかもしれない・・・」
野営なため、周囲の警戒を行いつつも興味はすでに女性陣の手料理に向かっている男子たち。
「なんでだ?」青年はキョトンとする。
「・・・だって・・・すごい会話してるし」少年は遠い目をした。
「でも、ラクウェルの料理はマジうまいぜ」
「・・・・・・ノーコメント・・・」
「早く出来ないかなぁ〜・・・もうお腹ペコペコ」
「・・・・・・ユウリィ、頑張れ・・・・・ラクウェルには負けないで・・・・」
祈るような気持ちで、少年は呟いた。
「・・・しかしよぉ、ああやって仲良く料理してる女の子達っていいよなぁ」
「そう?」
「・・おこちゃまにはわからないか」
「なんだよ、またバカにして」





仲が良いって、どういうこと?





「・・・・考えてみれば」
 果てしない荒野を歩む旅の途中。不意に、女性が呟いた。
「こうやって、長い間誰かと一緒にいるということなど、久しい気がする」
その言葉に、仲間達が振り返った。
「そう?」少年が答える。
「ジュードは村に住んでいたのだから感覚が違うかもしれぬが・・・・私はずっと一人で旅をしてきた。
時には他の渡り鳥と手を組んだり、依頼主の護衛などで同行したことはあったが・・・・決まった誰かとずっと一緒というのは、新鮮だ」
「ああ、わかるなそれ」青年が同意。
「そういわれてみれば、そうかも知れません・・・・」少女は微かな同意。
「これだけ一緒にいて、気心も知れ・・・・こういうのを、仲間というのだろうな」
「そうですね・・・。あ、でも・・・・」
「?」
「その・・・・・仲間ってことは、・・・・・友達ってことですよね?」
「・・・・・友達・・・・・」
一瞬意味が飲み込めずに呟く少年。
「・・そうだな、そう呼んでもいい」と女性。
「ですよね!」嬉しそうに、少女は女性を見た。
だが、少年はまだ呆けていた。
「・・・・・・ジュード、お前まさか・・・・」
「な、な、なんだよアルノー! べ、別にトモダチが嫌ってわけじゃあ・・・・!!」
「ああ、もういいもういい。そうかそうか、ジュードお前」
「なんだよッ! なんだよ、その目つき!!」
一方女性陣は話が飲み込めなかったようだったが。
「・・・・ああ、そうか・・・・そういえば、同年代の子供が村にいなかったと言っていたな」
「あ・・・! それじゃあ、お友達が・・・・・」
「ま、しょうがないわな」
「なんだよー!! 別に、意味わかんないわけじゃあないからねッ!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
言わなきゃいいのに・・・・誰かが思った。
「・・・村が大人ばかりでは、友達と呼べる相手はいなかっただろう」
「・・・・・・・・あ、うん、まぁ・・・・・」
「・・・・哀れだ、おこちゃま・・・・・」
「そんな目で見るのやめろよ!」
「でも、前はいなくても・・・今は、ここにいるじゃないですか」
「・・・・・・・・」少年はハッと少女を見た。
「そうだな、相違ない」
「気分的には保護者って感じだがな」
「余計なことは言うな」
「・・・嫌ですか?」
「・・・・・・ううん、そんなことない。ユウリィも、アルノーも、ラクウェルも、友達なんだもんね!」
「ジュード・・・・」
「俺としちゃあ、友達っつーかそうじゃなくなってもいいんだけどさ、なぁラクウェル?」
「どさくさにまぎれて触るでない。なくなってもいいのなら、縁でも切ってやろうか?」
「そ、そんな冷たい・・・・」




一緒に歩いてくれる友達がすぐ側にいるから。




「おいジュード。今度不夜城に行った際には俺が大人の遊びってモンを教えてやるよ。なんてったって、友達だからな!」
「え? お、大人のって・・・・・」
「こらッ! アルノーーーッ!!」
「・・・・ああいうのを、悪友って言うんですね・・・・」




だからこれからも歩いて行こう。どこまでも。






End.





仲間、そして友情のあり方のお話。微妙に支離滅裂。
村に子供がいなかったんだから、ジュードには友達っていなかったんだろうなぁ。そういう存在すら知っているのかどうかも疑問ですが。
ゲーム本編でそういうこと言ってたりしたらゴメンナサイ。だって知らなさそうなんだもん。
大体女の子すら見たことなかった貴重なおこちゃまなんだからな?
(2005/6/20)