Boy & Girl

 

 ある日、彼女がいきなりじっと顔をのぞきこんできた。
そのあまりに真摯な瞳に、彼は目をそらすこともできずに戸惑いながらも見つめ返すのみ。
「・・・・・・・やっぱり・・・」
彼女は言った。
「な・・・何?」
「キミ・・・・・・結構、女顔よね」

「だーーーはっはっはっはっは!! そいつぁいい!! がっはっはっはっは・・・・!」
「笑いすぎだ!!」
 うららかな昼下がり。カフェテラスで昼食を取っていた彼らは、その出来事について意見というか・・・感想を論議していた。
マリアがいきなりフェイトの顔を凝視したかと思うと、女顔だと言ってのけたらしい。
「いや、すまんすまん・・・・・ひっひっひ・・・・・・」
謝りながらも笑っている大男。フェイトは顔をゆがめる。
「大体、いきなりあんな言い草はないよな。ソフィアもそう思わないか?」
彼は、隣に座っていた少女に話を振る。少女・・・・ソフィアは少し考えて、
「・・・でも、間違ってはいないよね」
「なんでさ!」
「えと・・・・なんていうか、フェイトが女顔っていうより、フェイトってなんとなくマリアさんに顔が似てるようだから・・・・・」
「え??」
フェイトが予想外の答えを受けたかのように反応。
「あー、確かにな」同意する大男・・・クリフ。「お前、女装したら絶対マリアになるよな」
「な、なるわけないだろ!!」ムキになって叫ぶフェイト。
「でも、雰囲気が似てるし・・・」とソフィア。
「どこがだよ!」
一方で断固として否定するフェイト。
彼にしてみれば、マリアに似ている=女顔ぽいと言われているのが気に食わない様子。
「マリアも男装したらフェイトになるな」
「だーかーらー!!」
「何の話だい?」
別の声がかかる。彼らが見やると、昼食を手にネルがこちらを見下ろしていた。
・・・向こうにはアルベルと何やら話している、噂の張本人マリアの姿も。
「男装と女装の話を・・・」ソフィアが答える。
「違うって!」
「いや、な。フェイトとマリアが似てるって話だ」
「ああ、なるほど」
ネルも同じテーブルについた。
「なるほどって、どういう意味だよ」
「そのまんまさ。顔立ちは似てるよ。性格は正反対だけどね」
「座る場所空いてるかしら」
マリア達もやってきた。近くの空いてるテーブルからイスを引っ張ってくる。
「似てるかなぁ・・・・・」フェイトは思わずマリアの顔をジッと見つめた。
「ど、どうしたの、フェイト・・・・・」
「あ、いや・・・・・マリア、僕たちってそんなに似てるかな」
キョトンとするマリア。
「あ・・・・ほら、さっき・・・その、女顔とか言ってたじゃないか」
「・・・・・私と似てるから女顔っぽいわけ? それはちょっと違うんじゃないの?」
「それを除いても、似てるだろうが」とクリフ。
「てことは、私は男顔って意味なワケ?」マリアがジロリと睨む。
「そうとは言ってねぇだろうが!」あわてて否定する。「ほら、アレだ。俺が思うにだな、マリアは割と性格が男っぽいだろ。んでフェイトが女っぽい」
『どういう意味!!?』
一気に二人からツッコミが来る。
「おわっ・・・! いいから聞け! 性格が逆っぽいから、顔立ちもなんとなく逆っぽいんじゃねぇのか」
「それと、私とフェイトが似てるってことに関連性はないわよ」
「元々、フェイトが女顔だって言われたって話から入ってますから・・・」ソフィアがフォローする。
「性格が逆・・・ねぇ」ネルが呟く。「確かにあんたたち、中身と外見と性別が逆なんじゃないかい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
お互いの顔を見合わせる二人。
「・・・・テメェに言われたくはねぇだろうな・・・」ポツリとアルベル。
「なんか言ったかい?」
「何も」
「そんなに僕は女っぽいかい・・?」眉をひそめるフェイト。
「私ってそんなに男らしいのかしら」とマリア。
皆はそれぞれに考えを巡らせる。
「あれだ・・・・・・まぁ、なんていうか・・・」とクリフ。
「そうだっていえばそうかもしれないし、違うっていえば違うかもしれないし・・・・・」とソフィア。
「それが悪いとは言わないけどさ」とネル。
「・・・・くだらねぇ・・」とアルベル。
その後、彼らの一言はものの見事に一致した。

『ノーコメント・・・ってことで・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

   ジャキッッ

いきなり、マリアが立ち上がって装備していたフェイズガンを構えた(!)
「そう・・・・言わなくてもわかるわよ・・・・どうせ、私は気が強いわよ・・・しおらしいとは無縁よ・・・・でも!!」
数発発射! 大慌てで退避する仲間達。
「そういう時は、フォローの一つでも入れて欲しいってものでしょ!?」
再びフェイズガンを構えるマリア。慌てて、フェイトが止めに入る。
「マリア! 落ち着けって! こんなところで暴れてどうするんだよ!」
「放しなさい! 一発、お仕置きをくれてやらないと・・・!!」
「だーかーらー! やめてくれよ、お願いだから・・・」
息巻くマリアと弱気になるフェイト。
そんなやり取りを見ていた仲間達。

(そういうところが、性別逆なんだって・・・・)

誰もが、溜息をついたうららかな昼下がりであった。



END





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