奇跡の予感
それは、学校でのある一日の出来事。
「ピスタチオちゃ〜ん、そんなに逃げないでくださいですの〜」
朝の教室。他の講義のためクラスメイトはまばらであったこの教室で、いつものように居眠りしていたピスタチオが、いきなりペシュに起こされて何やら大きな虫メガネで顔を覗き込まれて数分。
「・・・・な、なんだっぴ・・・?」
「動かないでくださいですの!」
なおもジィ〜っと顔を見つめるペシュ。何がなんだかわからないピスタチオは困惑する。
「・・・・見えましたの!!」
「何がだっぴ?」
ペシュはピスタチオをビシッと指差してこう言った。
「ピスタチオちゃん、今日は車難の相が出ていますの!! 今日一日、車に気をつけた方がいいですの!」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
もう、何がなにやら。
ペシュはニンマリとして言う。
「今日は、なんだか私勘が冴えてる気がしますの。だから、今日はみんなの運勢を占ってあげようと思ったんですの!」
「勘って・・・・・勘で占うっぴか!?」
「文句ありますの?」
「おおありだっぴ!! そんな適当な占いなんかして欲しくないっぴ!!」
「んまぁ!! ピスタチオちゃんったら!!」
これまたいつものようにケンカし始める二人。
その後方。
「・・・で、これがこうだから・・・・・こうなるの。わかった?」
「アア・・・ムズカシスギマス、フレイアサン・・・・モウイッカイ・・・」
「もう! 何回目よ! だから、これがこうで、こうだから・・・・こうなって・・・・こっちは・・・」
一生懸命カフェオレに教えているフレイアの姿。しかしどうも、カフェオレの理解力がついていけないようだった。
「・・・それから、これがこうで・・・・・こっちがあっちにいって・・・・・それで・・・・」
「・・・・・・プシュ〜〜〜・・・・・・」
段々と、カフェオレがヒートアップしてきたようだ。余程、理解に苦しいらしい。
「それから・・・・・・・こっちが・・・・・・・これで・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ダメダーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
バクハツスルーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ボンッ
「きゃあっ!!!!」
「カフェオレ!!」
後ろで起こっている出来事に、ピスタチオ達も何事かと振り向いたその時。
がつんっ
ピスタチオの顔面に、何かが飛んできて直撃する。
「・・・・・・・ぴ・・・・」
「ピスタチオちゃん!!!」
そしてそのまま、後ろに倒れるピスタチオ。
「・・これは・・・・・・」
ペシュは、ピスタチオにぶつかったらしい物体を見やった。
それは彼らの足元でコロコロ転がっていたが、やがてフッと消えた。
「・・・・カフェオレちゃんの召喚魔法・・・・・ですの? 確か・・・・・はぐるまロボってカフェオレちゃんが・・・・」
そこまで呟いて、ペシュはハッと気づく。
歯車。車ではないか!!
「・・・当たりましたの!! やっぱり、今日は勘が冴えてますの〜〜!!!
早速、他のみんなも占ってあげますのーーー!! ファイト!!」
意気揚々と、ペシュは他のクラスメイトを探すべく、教室を飛び出した。
その後方から、フレイアの声。
「・・・・って、ペシュ!! ピスタチオはほったらかし!?」
ペシュは、休み時間の廊下を歩いていた。すると、向かいから何か話しながら歩いてくるクラスメイト二人を目撃する。
カモ発見、とペシュはニンマリ。
「あ、ペシュ」
「なんだ? ニヤニヤして」
シードルとカシスだ。
「今日の運勢を占ってあげますの〜。ちょっと、お顔を貸してくださいですの〜〜」
宙に浮いて、二人の顔をやはりどでかい虫メガネで覗き込むペシュ。
「占いって・・・・・・・」
「あ! 見えましたの! シードルちゃんには女難の相が出てますの!!」
「ええっ!!?」
「はっはっはっは!! いいな、それ!」大笑いするカシス。「お前ってさ、絶対将来、女で苦労するタイプだよな」
「なんだよ、それ!!」
「カシスちゃんは〜・・・・・・うん! 見えましたの!! 水難の相ですの!!」
「はぁ!!?」
「二人とも、気をつけてくださいですの」
ペシュは床に降り立った。一方、やや不審げに顔を見合わせる二人。
「・・・・でも、当たるの? それ」とシードル。
「当たりますの!! さっきも、ピスタチオちゃんの運勢を当てましたの!!」
「本当かなぁ・・・・・」
「信じてませんの!!?」
問答している所へ、ペシュの後方からクラスメイトが現れた。
「ねぇ、お取り込み中のところ、いいかしら?」
「あ、ブルーベリーちゃん」
「カシス、シードル、あなたたちこの前の魔法理論のレポート、提出してないでしょ」
あっ、しまったといった表情を浮かべるシードルと、さも当然といった体のカシスと。
「忘れてた・・・・・」
「先生、怒ってたわよ。特にカシス、あなた常習犯なんですってね。
先生がもう勘弁できないって、私に相談してきてね。先生の許可を得たから」
「・・・何の?」
ブルーベリーは無言で右手を横に差し出した。
彼女のこの体勢は、彼らも知っていた。魔法発動の合図。
「ま、待て!! 何する気だよ!!」
「お仕置きしてくれって、頼まれたの。だからとりあえず・・・・・・」ブルーベリーは極めて冷静に。「ソーダフラッペの刑に処すから」
ブルーベリーは魔法を発動させ始める。ヤバイ、と本能で直感したカシスはあわてて、
「逃げるぞ、シードル!!」
「え!!? なんでボクまで逃げなきゃ・・・・・」
「いいから来い!」
「うわーーーーーっ!! キミ、ボクを巻き込もうとしてるだろっ!! 手離してよっ!!!」
「待ちなさい、二人とも!!」
「助けてーーーーーーー・・・・・・・・・!!」
ペシュの目の前で、猛然と逃げ出すカシス達、そしてそれを真剣に追いかけるブルーベリー。
彼女は、考えた。
女・・・・水・・・・ブルーベリーのことだ。
再び、ペシュはニンマリとした。
「また当たりましたの!! ・・・・今日は本当に冴えてますの〜〜」
昼休み。学校の校庭では元気な生徒達が遊びに興じていた。
その中に見つけた、クラスメイト達。
「キルシュちゃーーーん、セサミちゃーーーーん!!」
彼らは一度こちらに振り向いたが、なんだか動揺した表情を見せた。
「どうしたんですの?」
「ペシュ・・・オマエ、まさか俺達を占おうってんじゃ・・・?」とキルシュ。
「んまぁ、なんでわかりましたの?」
「なんでもクソもねぇだろ!」とセサミ。「聞いたぜ、カフェオレ爆発事件と校内洪水事件! どっちも、オマエが関わってるんだろ!!?」
ペシュはキョトンとした。
「・・・・関わってなんかいませんの〜。たまたま居合わせはしたけど・・・・」
「とにかく! 俺達は占ってもらわなくていいぜ。平和に生きたいしな」
「そんなこと言わないで欲しいですのー・・・・ちょっとだけですの! ね?」
「ヤなもんはヤだ。あっち行けよ」
二人はペシュから離れて向こうに歩いていく。
なんだか、少しだけムカムカきたペシュ。
「なんですのーーー!! どうなっても知りませんの!! ライオンに噛まれてケガしちゃえですのーーー!!」
はるか向こうでぎゃーぎゃーわめくペシュをチラリと見やるキルシュ。
「なんか、物騒なこと叫んでねぇか? あいつ」
「ほっとくのが一番だぜ、アニキ」
「そうだな。よぉぉぉっし!! 続き行くぜーーー!!!!」
キルシュは近くにあったサッカーボールを思いっきり蹴った。
どがっ
何かにぶつかった音。ハッとして見やるキルシュとセサミ。
ボールの飛んでいったその先に、顔を伏せてたたずんでいたある少女の姿。
ボールは、彼女の足元で転々としていた。
「・・・・・アンタ達か・・・・・これ蹴ったの・・・・」
少女は思いっきり重低音で問いただす。彼女は顔を上げる。怒りに満ちたその形相は、二人を恐怖に陥れるに十分の迫力だった。
「・・・あ・・・・ワリィ、レモン・・・・・・・」
とりあえず謝ってみるが、多分聞き入れてもらえないことはキルシュもわかっていたに違いない。
キルシュとセサミは、ダッシュで逃げ出した!!!
「待ちなっ!!」
「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!!!」
即座にレモンは魔法を構成、二人に解き放った。
この様子をやはり一部始終みていたのはペシュ。
そして考えた。
レモンちゃんはネコ・・・・・ライオンもネコ・・・・これはもしかして、一致?
三度、ペシュはニンマリとした。
「すごいですの〜、顔を見なくても当たりましたの!!」
放課後。
もうクラスメイト達も下校してしまい、ペシュももう帰ろうとしたところへ。
「ペシュ」
廊下の向こうに、見慣れたターバン姿が。ガナッシュだ。
「ガナッシュちゃん!! まだ残ってたんですの?」
「ああ、ちょっと色々あって」
「ガナッシュちゃん、今日、私とっても冴えてるんですの!! ガナッシュちゃんの運勢、占ってあげますの!!」
その言葉に、ガナッシュの表情が少しこわばった。
さすがに、占いの噂を聞き及んでいたようだ。
「ペシュ・・・・・なんでまた、占いなんて・・・」
「ええと〜、なんとなくですの」
「・・・・そうか・・」呆れるガナッシュ。
「私の占いで、みんなが少しでも幸せになってくれたら、とっても嬉しいんですの」
・・・・誰か幸せになれたんだろうか・・・・事例を思い出して、苦笑するガナッシュ。
「ガナッシュちゃん、とても運勢がいいですの! 今日だけでなく、何日か続きますの!」
「そうかい? ・・ありがとう」
「なんとなく・・・・・待ち人来る・・・って感じですの」
「はは・・・・・そうか。期待してみようかな」
「それがいいですの!」
そんなこんなでペシュも帰宅する。
今日は、いいことをしましたの・・・・・・明日も、いい一日でありますように。
次の日以降、ペシュの勘とやらは命中する確率が普通どおりに戻ったのだが。
この数日後にガナッシュはずっと念願だった姉との面会を果たしたという・・・・・・
END
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