深く暗き闇のお台所事情
彼らは、人間だ。・・・「この」場合、真の意味での人間は半分くらいしかいなかったが。
人間・・・いや、生き物であれば避けて通れないものが必ずある。・・・・・食。
とてもとても深く、暗い森の中。
彼らは友人達を追ってこの森に進入していた。新たに2名加わって、意気揚々と進もうにも腹が減っては戦はできぬ。
キャンプ突入以来何度目かの、野外炊飯と相成った。
「・・・んもう! 遊んでないでマジメに薪拾ってよ!」
一生懸命薪を拾い続ける少年達。いや、拾っていたのは一人だけだった。
シードル・レインボウ、薪拾い部隊(仮)の一応リーダー。でも、何故か発言力は弱い。
そのためか、部隊の面々は一人働くリーダーを尻目に追いかけっこなどして遊びふけっていた。
「次はセサミがオニだっぴーーー!!」
「逃げるでぺたこーーーーん!!」
「待てぇっ!」
「・・・・・・」不真面目な部隊の面々を見やって、シードルは溜息をつく。
最年少セサミとその次々点ピスタチオは仕方ないとして。
「こんにゃく様」のバシュラールは話によれば、もういい年の大人のこんにゃく様なハズだったのだが・・・
同じ木の精霊を持つ同士ということで、何故だかピスタチオと意気投合してしまったようだ。
一時はセサミを恐れていた彼だったが、今ではすっかり打ち解けており、こんな惨状となっているのだ。
シードルは頭を抱えた。
「・・・・言いつけるぞ・・・・」
彼らとは別部隊・・・料理部隊の面々もまた各々の作業に没頭している。
サボりがバレたら、多分お仕置きが待っているだろうから・・・・シードルは言いつけることに決めた。
深い森の、やや開けた場所で料理部隊は食事の支度を整えていた。
「・・・・・これを押すのか・・?」
「・・・アヒャヒャヒャヒャ!! クスグッタイデス!!」
「機械がそんなの感じるかよ! 黙って座ってろ!」
一体の古代機械に向き合う一人の少年。機械の体をあちこちいじくっていた。
「どう〜? 動かせそう?」
離れた場所から、少女がやってきた。
「ダメだ。どこを触ればいいのやら、さっぱりだ。大体カフェオレ・・自分の機能くらい把握しとけっての・・・」
「イヤ〜、メンボクナイ」
照れた仕草で頭をかく機械・・・カフェオレ。
「ナンセ、ツイコノマエ トリツケラレタ モンデスカラ、ジッサイニ ウゴカシタコトハ ナインダナ、コレガ」
「・・・使えれば、重宝すんだけどなぁ・・・・・・」
「まさに一家に一台って感じね」
「フフフン、ソ〜ダロ〜、ソ〜ダロ〜。ウヤマイナサイ」
「使えないから重宝しないけどな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ギニャーーーーーーーーーーー!!!」
先ほどから一体何をしているのかというと、料理するにあたってカフェオレが、「オレサマ、ドワーフタチニ オーブンニカイゾー サレチャッタノヨ」とか激白したのが発端。
しかし、当のカフェオレがオーブンの使用方法がわからないとのたまったため、懸命にカシスがあちこいじくっていたわけだ。
その間フレイアは何をするでもなくジッと様子を見ていたのだが。いや、薪がないことにはどうしようもないので。
この森で一人でウロウロするようなマネはできないので、とりあえず二手に別れていた次第であった。
・・・・能率は相当悪いようだが。
「ただいま〜・・」
そんなときであった。薪拾い特攻隊(仮)が帰ってきた。これまた、抱えきれないほどの薪を持って。
「すご〜い、そんなに拾ったの」
「頑張ったっぴ! 誉めて欲しいっぴ!」
「いや〜、大変だったぜ〜」
ぬけぬけと言うピスタチオとセサミを見て、シードルは顔をゆがめた。
「・・・・ったく、キミたちは・・」
「ごくろーさん、ピスタチオ、セサミ」カフェオレをいじりながら言うカシス。「んじゃ、ついでに獲物取ってきてくれよ」
「まだ労働させる気だっぴかーーーーーーーーっ!!!?」
即座に反発する二人。
「オニ! 悪魔! 人でなし! エニグマ!」
「るせぇ! メシ食いたかったらしっかり働いて来いっ!」
「おわっ!」
薪の一本を手にとって二人に投げつけるカシス。
逃げるように二人は「行ってきま〜す!」と立ち去っていってしまった。
「・・・大丈夫なの、あの二人だけで」とシードル。
「心配でぺたこん」とバシュラール。
「ならお前らも行ってこいよ。俺は動けないし」
「・・・・・・・・ボクはあの二人のお守りじゃないんだけどなぁ・・・・・」
ブツブツ言いながら二人の後を追うシードル。バシュラールもついていく。
「・・・・ねぇ、今のちょっとひどくない?」たまりかねてフレイアが呟いた。
「何が?」
「だって、薪拾ってきて、さらに・・・」
「ちゃんと拾ってたならやらせなかったさ。あいつら、サボってやがったからな」
「・・・・・・・・え。何でそんな・・・・」
「手がちっとも汚れてなかった。・・・ったく、この俺をダマそうとは百年早ぇんだよ・・・」
「・・・アア、オソロシイ・・・・」
カフェオレが頭を横に振った。
一刻後、どーにか獲物(らしきもの)を死に物狂いで取ってきた獲物調達部隊(元薪拾い部隊)は、ようやくその責務から解放されて、食事まで自由時間となった。
ほどなくして、どこからかいい匂いがし始める。
「あ〜〜・・・ハラ減ってきたぁ・・・」セサミがこぼす。
「早く行くっぴ! 先に食べられたらオシマイだっぴ!」
「おーーー!!」
子供二人がダッシュで走り出す。後ろから頭を押さえながらシードルもついていった。
「いつもこんな調子でぺたん?」バシュラールが訊ねる。
「まーね・・・疲れるよ、ホント」
「でも楽しそうでぺたん」
「・・・・・・・そうかなぁ・・・・・・」
呟いた時、シードルふと思い出した。こんにゃく様はもう彼一人しかいないという孤独感。
どこか羨望めいた口調だった彼を見つめるシードル。
「・・ごめん・・」
「? 何をあやまるでぺたん?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「私たちも早く行くでぺたん!」
「そうだね」
クガンデ村に向う間の仲間だけれど、今を楽しくやらないと。考え込んでも始まらない。
シードルたちも、二人の後を追った。
・・・・・迷子になっていた二人を見つけるのにさほど時間は要しなかったが。
「あ、やっと来たわよ〜」
一体どこに隠し持っていたのか、巨大なナベをかきまわしているフレイア。
向こうでは何故かタマゴまみれのカフェオレの姿。目玉焼きもおいしく焼けるらしいカフェオレ・オーブンで、散々実験台にさせられたらしい・・・・
「うまそ〜〜〜〜!!」
セサミとシードルがナベを覗き込んだ。
「さすがフレイアだよな〜」
「結構料理上手なんだね」
「・・・・え?」
ちょっと意外なフレイアの反応に、セサミ&シードルは彼女を見つめた。
「『・・・・え?』・・・・って?」
「あ、コレ・・・・・私じゃないから。かきまわしてただけ」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
二人は顔を見合わせた。そして、他に可能性のある料理部隊の面々を見比べた。
「・・・・・・カフェオレ、料理できたんだ・・・・」
「ナンデ ソーナルノカネッ!」
「・・・・・・・・・・ってことは・・・・・」
二人はバッと、元不良の少年を見やった。
「悪いか?」
『否定しない!!!』
二人は恐れおののいて抱き付き合った。そして後ずさり。
「知らなかったっぴか?」
なんだか冷静なピスタチオに、二人は視線を合わせる。
「・・・・知ってたの?」
「もちろんだっぴ。闇のプレーンに来てからゴチソウになったっぴよ」
「オマエも最初はビビってたよなぁ」
「・・・・・そ、それは昔のハナシだっぴ・・・・・・・二、三日ほどの・・」
「普通ビックリするわよ、ねぇカフェオレ」
「マァ、イガイセイヲ ツイキュウッテコトデ・・・・・」
会話をジッと聞いてた二人はひたすら呆然。
「・・・なんだよ、お前ら。文句あんのか?」因縁をつけ始めるカシス。
二人は黙って首を振った。横に。
「イヤならいいんだぜ? 食わなきゃいいだろ。そりゃ、野郎の手料理なんて食いたくないよなぁ、俺もイヤだし。フレイア、あいつら飯いらねぇってさ」
「ん。わかった」
『わーーーーーー、ごめんなさいっ!!!!』
かくて、楽しい晩餐とあいなった。
「ねぇ、フレイア」
再び歩き始めた一行。シードルがフレイアを呼び止めた。
「光のプレーンでも何日も旅してたんでしょ? 誰が食事作ってたのさ」
「まだこだわってたの?」
「・・・い、いいじゃないか・・・・・」何故か赤くなるシードル。
「ずっとアランシアが担当だったわ。彼女、結構家庭的よ」
「へー。でも、そんな感じ」
「花嫁修業とか言ってたけどね」
「はははははは」
「お前も修行した方がいいんじゃねぇか、フレイア」カシスが割って入った。
「わ、私はまだいいのよ」
「何が」
「・・・・・・色々」
それだけ呟いて、彼女は小走りに先頭のカフェオレのところへ。
「あははは、照れてるよフレイア」
「お前もした方がいいんじゃねぇの」
「・・・・何を」
「花嫁修業」
「・・・・・・・・・・キミって人は!!!」
後ろでぎゃーぎゃー騒いでいる少年達を尻目に、フレイアは思った。
みんなで無事に元の世界に帰れたら、ちょっとくらいやってみてもいいかも、と。
END
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