SS:少年たちの受難(後編)
『シンデレラ(オリジナルバージョン)』
(なんだ? オリジナルバージョンて?)
『昔々、ある所にシンデレラという少女が住んでいました』
いよいよ、劇の始まりである。最初の舞台は、シンデレラの実家。シンデレラは継母と二人の姉と暮らしている。
しかし、継母と血のつながりがないシンデレラは、毎日ドレイのようにこき使われていた。
『シンデレラは、毎日毎日いじわるな継母と姉に、こき使われていました。』
俳優登場。継母(本人はいやがったが、最年長ということでレモン)と姉二人(ブルーベリー、キャンディ)、
そしてシンデレラ。シンデレラが登場した時、何故か黄色い歓声が上がった。
とりあえず、「普通のシンデレラ」のようにシンデレラをこき使う。
「シンデレラ! ここ汚れてるわよ! ちゃんと掃除しなさい!」
(まるで姑だわ、キャンディ)
でも、ちゃんとなりきれる彼女を、ブルーベリーは素直にすごいと思った。
(・・・でも、あまりにも普通・・・・・。何か、とんでもないこと言い出すんじゃないかって思ってたけど、
考えすぎだったかしら?)
一方のシンデレラは恥ずかしげにうつむいて掃除をしていた。
(ううう、なんでボクがこんなメに・・・・・。こんな姿、ママに見せられないよぅ・・・・)
『しかし、シンデレラも黙ってイジメられてはいません』
(えっ)
全員が思わず客席上部・・・ナレーター達が劇を見ている「管理室」を見た。
薄暗くてよく見えないが、そこにガナッシュを始め劇に出ないクラスメイトがいる。
『シンデレラは、継母がいないスキに彼女のお茶にぞうきんの汁をギュゥとしぼり入れました』
(なんだってェ!?)
一番あせったのは勿論継母。一方、いいのかなぁ、という表情でシンデレラは雑巾のしぼり汁をギュゥと。
「・・だって、ナレーションには従わなくちゃ、ねぇ・・・」
「いいのかしら・・・・こんな劇・・」
思わず呟くシードルとブルーベリー。
『そうとも知らず、継母はそのお茶をおいしそうに飲み干しました』
「・・・・・・・・」
いや、もう知ってるし。汗だくになりながら、継母はそのお茶をにらみつけた。
姉たちもシンデレラも観客も、その一挙一動をかたずを飲んで見守っていた。
「そんなには入れてないからさぁ・・・」
「・・・そういう問題じゃないよ、シードル・・・・・」
(ガナッシュ・・・・・劇終わったら殺す!!)
もう、どうなっても知るもんか! 勇気を出して、継母はお茶をグッと飲み干した。
「・・・もっとおいしそうに飲まないと!」とキャンディ。
「飲めるかっ!」
継母は湯のみを放り出し、しばらく肩で息をした後、
「おいしいお茶だこと・・、オホホホホホホ・・・・・・」
棒読みセリフをはき捨てた。横で複雑な溜息をつく3人。
(何考えてるの! 彼は!!)
(でも、何考えてるかわかんないトコも素敵よねぇ)
(キャンディっ!!)
『ある日のこと、継母と姉二人はシンデレラを置いて、お城で開かれるパーティに行ってしまいました』
舞台に城が加わり、3人は退場。シンデレラは一人残される。
『お城のパーティに行きたいシンデレラ。しかし、パーティ用のドレスすら持っていません
どうしたらよいか、一人考えるシンデレラ』
「(・・・普通だ・・不気味なくらい)ああ、どうしたらいいのかしら」
『そんな彼女を見かねて、通りすがりの魔法使いが彼女の家を訪れました』
どがぁぁぁぁぁっ!!
「!!?」
いきなりの轟音に、シンデレラは本気で驚いてバッと後ろ(のセット)を見やった。
「なんだよ、開かねぇじゃねぇかよ、このドア!」
開くようには作られていなかったドア(のセット)を蹴り破って、魔法使い(キルシュ)が現れた。
「・・・キルシュ、横から入ればいいじゃないか・・」
「あ? ・・・・・ああ、そうか。ドアからドアからって思ってたからよ、ワリ!」
「・・・・・・・・」
なんで、コイツが魔法使いの役なんだろう。シードルは頭を押さえた。
何か目立つ役をやりたがったキルシュができるのが、これしかなかったからだ。
「・・・で、えー・・・・・・」
何を言えばいいのか迷う魔法使い。
『魔法使いは、シンデレラのためにドレスを用意してあげようと思ったのです』
「ああ、そうそう、そういうことだよ!」
「自分の役回りくらい把握してきてよ!」
『そのかわりに、魔法使いはシンデレラに無理難題をふっかけました』
(うえ!?)
2人が顔をしかめた。キルシュは懸命に「無理難題」の内容を考えた。
考えて考えて、出した答えが。
「う、い、今すぐ、腕立て伏せ一万回!!」
「げっ!!!」
確かに無理難題だが、そんなことを言われたら、本当にやらなきゃいけなくなっちゃうじゃないか!
『シンデレラは仕方なく、言うとおりにします』
「ムリだよ、ガナッシュ!!!」
「・・・じゃ、千回に変更・・ってことで・・・・」
「それもムリ!!」
『・・・魔法使いは、シンデレラの根性のなさに呆れ、無条件でドレスを提供することにしました』
「・・・・・」
このフォローもムカつくのだが・・・シードルは思わず管理室を睨んだ。
「えーと、じゃあ、ドレスをだな、ほれ!」
舞台袖からドレスを渡され、魔法使いはシンデレラにそいつを投げつけた。
『シンデレラは喜んでドレスに着替えました』
シンデレラは手元のドレスと管理室とを交互に見やった。
「・・・・着替え・・・って、ここで??」
「じゃねぇの?」
「・・・・・・・・・・」
「いいじゃんかよ。女子ならちょっとアレだけどさ」
「・・・・キミには、わざわざ特注のドレス作らされたボクの気持ちなんてわかんないんだよ・・・・」
「うおっ、マジかよ」
泣く泣く、シンデレラは魔法使いの陰に隠れてドレスに着替えた。
『魔法使いはシンデレラに、12時には魔法が解けるからそれまでには戻るように、と言い聞かせました。』
「つーことだよ」
「・・・・キルシュ、もうちょっと演技しようよ・・・せめて・・・」
「覚えらんねぇんだよ」
シードルは再度頭を押さえた。
シンデレラは、魔法使いの協力を得て、城に向った。
城には、着飾った貴婦人たち(エキストラ・フレイア、アランシア)がたくさんいた。
『しかし、どの女性よりもシンデレラが一番美しかったのです』
(たはは・・・)
なんだか複雑なシンデレラ。
『そして、いよいよお城の王子様の登場です』
お城のセットの一部にスポットライトがあてられた。王子様の登場だ。
だが、しかし。
現れたるは、大きな体、茶色くてゴツゴツした肌、ゆっくりとした足取り、空洞になった目と口。
「ショコラ!!!!」
舞台全員と管理室全員が目を見張った。
衣装すら身につけていない、大道具兼セット運搬係のマッドマン、ショコラ。
「うーわー」
いつもの調子で、ショコラはてくてくと歩いてきた。
『・・・・・・・』
ナレーションも、言葉が出ないのか。
『・・・・逃げたな、あの野郎!!!』
突然の大音量のナレーションに、ほぼ全員が驚いた。
『ガナッシュちゃん! マイク入ってますの!!』
『・・ハッ、(プツン)』
あまりな事態に、管理室も混乱状態だった。
「すごいっぴ。よりにもよって、ショコラが身代わりだっぴ!」とピスタチオ。
「・・・・でも、これはこれで面白いかも知れませんの」とペシュ。
「コノママイコウゼ〜」
「・・・・・・・・・・・・・」
しばし、肩で息をしていたガナッシュだったが。
「・・・ペシュ、ピスタチオ、カフェオレ。一つ、頼みたいことがあるんだが」
「なんですの?」
「カシスを生け捕ってきてくれ」
『!!!!!!』
「俺はここから動けない。きみらしかいないんだ」
「ムリだっぴ〜〜〜〜〜〜〜〜!! 逆に生け捕られるっぴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ガナッシュは嘆息した。
「キルシュが手が空いてるだろ。何だったらカベルネにも手伝ってもらってくれ。
・・・・・手段は問わないから、とにかく連れて来て欲しい。最後のシーンまでには」
手段は問わないとは・・・・・
「ガナッシュ、ゲキガストップ シテルゼ〜〜」
「頼む」
それだけ言うと、彼はマイクに向った。
『・・・ダンスパーティの始まりです』
舞台の俳優達は少しホッとしたように、劇を再開する。
音響係のアランシアがダンスミュージックを流し始めた。
「・・・このまま、続行?」とブルーベリー。
「ウケは取れたわよ、少なくとも」とフレイア。
「・・・・・・・・ちょっと予想外よね、確かに・・・」
『王子様は、数多い貴婦人達の中から、シンデレラを見初めました』
皆が王子様に注目した。しかし、当の王子様は、何が何やら理解していない様子。
(ショコラ! 動いて動いて! 今は王子様なんだから!)
シンデレラがせかし、王子様は両腕をあげた。
「おうじー」
「あー、もう!! ショコラ、踊ったりとかできんの? ・・・・なんて、聞くだけムダかなぁ・・・」
「おどるー?」
「そう、踊るんだよ。・・・ああ、もう、何でもいいよ」
王子様はしばらく、何か考えていたようだがふと、シンデレラをいきなり持ち上げた(!)。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「まーわーるー」
王子様はシンデレラを抱えたまま、その場でグルグル回り始めた。
「ぎゃーーーーーーーーーー!! 回んないでーーーーーーー!!
「きゃははははははっ!」思わず大声で指差して笑うキャンディ。
「・・・・なんだか・・・」一方で頭を抱えるブルーベリー。「もう、どうでもいいわ・・・」
会場は、爆笑の渦に包まれた。
一方。
「この学校、広すぎるっぴーーーー!! 絶対見つからないっぴーーーーーー!!
ガナッシュにお仕置きされるっぴーーーーーーーーーー!!」
「ピスタチオちゃん! 叫ぶヒマがあったら探しますの!!」
総勢6人(ペシュ、ピスタチオ、カフェオレに加え、キルシュとカベルネとオリーブもついてきた)の捜索隊は、
だだっ広い学校内をやみくもに探し回っていた。
「最後のシーンまでって、ムリだと思うヌ〜」とカベルネ。
「イッソ、ショコラニヤッテモラオウゼ。ソノホウガイイッテ、ゼッタイ」
「・・・ガナッシュ、きっと何か考えがあるのよ・・」とオリーブ。
「ロクな考えじゃねぇだろうけどな」とはキルシュ。
「カベルネちゃん、その大荷物はなんなんですの?」
カベルネは一件を聞いて、どこからか大きな袋を持ち出して来ていた。
「最終兵器だヌ〜」
「最終兵器・・・・って」
「これを使えば、ほぼ確実に捕まえられるヌ〜。後は、本人を探すだけだヌ〜」
「すげぇ自信だな、カベルネ」
「任せるヌ〜」
カベルネは、胸を叩いた。と、カフェオレが声を上げた。
「ハッケン!! アソコダ!!」
ダンスパーティ(?)の後、大きな時計台が十二時を告げた。
『シンデレラは魔法使いとの約束を思い出し、急いで帰ろうとします』
「あ、お、おろして、王子様・・・・・」
「んー」
王子様はシンデレラをおろした。少し、足元がフラついている。
「あ、それじゃ・・帰るんで・・・」
「うん、ばいばーい」
「・・・少しは引き止めて・・」
『シンデレラは、王子様と踊ったのが自分であるとの証拠を残そうと、ガラスの靴を王子様に手渡しました』
(・・・ごーいんだ・・・)
というより、したたかなシンデレラだ。シンデレラは、靴を片方王子様に渡した。
「それじゃあ・・・」
シンデレラは急いで家に帰った。
そして、また今までのような、散々な毎日の始まりである。
「シンデレラ! こことこことここ! 汚れてるわよ!! 掃除しなさいっ!!」
「ううっ、ひどい・・・」
いじわるな姉役が板についてきたキャンディ。元からか?
『そんなある日、町にお城からの使者がやって来ました』
家とは反対側のセットから、使者(セサミ)が巻物を持って現れた。
「(やっと出番かよ、長ェ・・)えーー、皆のもの、心して聞くがいい」
姉たちが何事かと家の外に出る。
セサミは今度はガラスの靴を取り出して、
「えーーー、この靴の持ち主を探している! 城の王子様が、この靴の女性にキュウコンしたいとの仰せである!」
「・・・・・・・・・・」
あの王子様が??
「・・・(どう続けんだよ、この後・・・・)」
そして、当の王子様が姿を現した。途端に、何故か黄色い声援が。
不思議に思ってセサミが後ろを向くと、今度こそ本物の王子様がブスッとした表情で立っていた。
「あれぇ!? オメェ、逃亡したんじゃなかったのかよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
黙して語らず。
『パーティに参加していた女性たちは、王子様の様子が違うのに驚いて、理由を尋ねます』
「えっ」
理由・・・って。
「どうして身代わり・・じゃなくって、お姿が違うんですかぁ?」とキャンディ。
「あ・・・や、それは・・」
『そこへ、王子様の付き人が割って入り、理由を説明しました』
(オレかよ!!)
いきなりふられて、セサミは困惑した。
「あー・・、あのだな、その、つまり・・・・」
「頑張ってセサミ!」
「・・・・そ、そうだ! そうだっていうか、そう! 呪い! 王子は岩男の呪いにかかっていたのだ!」
「(岩男の呪いって・・・)・・うん、まぁ、そんなとこだ。はっはっは」
「テメェのせいだろカシス!」
「固いコトいうなよ。このほうが面白いと思ってさ」
「ウソだ! それは絶対ウソだ!!」
『・・・・付き人は、靴を差し出して、女性達にはかせてみました』
付き人は持っていたガラスの靴を舞台に置いた。特注のガラス(実際はプラスチック)の靴である。
女性のものにしては、大きい気がする・・・
ゆえに、他の女性達がはいても大きくてはけなかった。
「そこの女おと・・・あ、いや、女性もはいてみたまえ、うん」
「女男ォ・・・?」
やや腹立たしさを覚えながら、シンデレラは言われた通りに靴をはいてみた。
すると、(まぁ当然だが)ピッタリではないか!
『ついに靴の持ち主を見つけた王子様。あまりの嬉しさに、ツルの舞を踊りました』
ガタガタッ
思わずスッこける王子様。・・・しばらく、うずくまって動かなかった。
「・・・なぁ、オレ思うんだけど」とセサミ。
「オマエ逃げてなかったらさぁ、もうちょっと違う展開だったんじゃないかって・・・」
「・・・・・・・・・」
王子様はしばし思案していた。どうしよう、と。
ナレーションに絶対従うのが、この劇のルール。しかし、だ。
あのオッサン(注:ガナッシュ)、明らかにヒトをオモチャにして楽しんでいる。
・・・だとしたら、あえて違う行動を取る!
「・・・うっ!」
王子様は、急に胸を押さえて苦しみだした。周囲は何事かとどよめく。
王子様の付き人は、(アドリブと察して)王子様に近寄った。
「どうした! ・・・じゃなくって、どうしました!?」
「・・・・・呪いが・・」
「えっ?」
「岩男の呪いが! 呪いのせいで3分間しかこの姿でいられないのだ! ・・・というワケでさらば! オイ、ショコラ交代し・・・」
「待たんかっっ!!!」
「テッ!」
思わず、手持ちのハリセンで王子様にツッコむ付き人。笑いが起こる。
「んなコト言って、また逃げようとすんな!」
「るせっ! 好きでやってんじゃねぇんだ!」
「こっちだって!!」
「めちゃめちゃ自然な展開だろうが!」
「めちゃめちゃごーいんだぁーーーっ!!」
王子様と付き人の(役を越えた)口喧嘩を、みんな思い思いに見ていた。無論、ガナッシュも。
『・・・・・の野郎・・・』
『ガナッシュちゃん! ガナッシュちゃん! マイクマイク!』
『・・・・とにかく』このままでは劇が終わらないと判断したナレーター。
『王子様とシンデレラはめでたく結ばれることになったようです・・・おそらく』
(ごーいんだ・・・・ていうか、ガナッシュも困ってる・・・・)
まぁ、彼が困ろうと知ったことではないシンデレラ。
さっさと終わらそうと、いまだ口喧嘩している王子様たちに近づいた。
「ホラ、さっさと終わらせようよ。カーテンコール、カーテンコール」
『しかし』
来た! 皆が思った。
『この展開に納得いかない姉達が、シンデレラを抹殺しようと魔法をブッ放しました!』
「なぁっ!!?」
今度こそ、矛先が自分に来たと悟ったシンデレラ。
見ると、姉二人がこちらを見ていた・・・
「・・・従うのがルールよね・・・一応」ブルーベリーが魔法を準備する。
「一番の見せ場ってヤツよね、これってさ」ニヤリと笑うキャンディ。
シンデレラは、命の危険をひしひしと感じた。観客も、どよめく。
「助けてぇぇぇぇ!!!」
「待ちなさいっ、シンデレラ! プレーステール!!」
「ソーダフラッペ」
「ぎゃぁぁぁぁーーーーーー!!」
激しい風が水流となって舞台全体をおおい尽くした!
観客も、ヤバいと察して一斉に避難し始めた。
『ガナッシュちゃん!! 大変ですの!! やめさせてくださいですのーーー!!』
『そしてその怒りは王子様にも向けられました・・・・』
『ガナッシュちゃーーーーん!!!!』
『逃げるっぴーーーー!! 殺されるっぴーーーー!!』
舞台は、いまや阿鼻叫喚の地獄絵図となったのでした・・・・・・
「・・・・・まったく、あなたたちは・・・」
演劇(?)終了後、クラス全員が集まっての打ち上げ(?)だったが・・・・
舞台をめちゃくちゃにした、観客に危険が及んだ、魔法使いまくった等等の責でマドレーヌ先生の叱責を頂戴していた。
「オレたちは無関係だヌ〜・・・」
「まったくだっぴ。むしろ、被害者だっぴよ」
カベルネとピスタチオがヒソヒソ。勿論、彼らは確かに無関係の被害者だ。
「とはいえ、校長が『わんぱくなのは結構結構』とかおっしゃってたし・・・(何考えてるのかしら)、
せっかくの学術祭なので、特別に一ヶ月のバツ掃除で許しましょう」
「ホッ・・・」
「じゃ、学術祭の間だけは今回の件は忘れて楽しんで来なさい。以上!」
「おーーーーー!!」
ようやく、すべてが終わってみんなホッと一息。あとの3日間、自由に楽しもうとそれぞれ解散と相成った。
「・・・ふぅ、もうコリゴリだよ・・・」
思わず、溜息が出るシードル。ある意味、彼が一番散々だったに違いない。
「ごくろーさま、シードル」
フレイアが声をかけてきた。
「・・・そもそも、キミがボクを推薦しなかったら、こんなことには・・・」
「いまさら言っても仕方ないでしょ。面白かったんだから、結果おーらい」
「ボクは全然面白くなかったよ」
「よう、ご苦労さんシードル」
この声は、すべての元凶!
「ガナッシュ! ボクを殺す気!? あんなメチャクチャにしちゃってさ」
「しょうがないだろ、大幅なシナリオ変更を余儀なくされたんだから」
「キミはいーよ、上から好き勝手に指示してただけだもの」
「ははは、確かに。結構面白かった」
「・・・・・・・・・」
もはや問答しても無意味だと感じるシードル。
と、ガナッシュの後ろに人影が。彼が振り向くと、カシスとレモンの姿。
「・・・・どうした?」
「どうしたじゃねぇよ。テメェ、やり方が汚ぇんだよ。どうせ、カベルネに指示したのもテメェだろ」
「?? カベルネがどうかしたのか?」
「ほーほー、とぼけるかよ? ちょっと逃げたくらいであんなメに遭わせるとはなぁ」
「そーいやカシス」レモンがふと横を向いた。「アンタ、逃げたクセにまた戻ってきたよね。なんで?」
「・・・・・・・」
「ああ、そう、答えたくない?」
「・・・・・・・・・・・・」
「それって」フレイアが口を挟んだ。
「アナタを探すときにカベルネが、ありったけのレインボウボム持って行ってたけど、それ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「くくっ、なるほど」ガナッシュが笑った。「カベルネのやつ、考えたな」
「だから、それはテメェが・・・!」
「もういいよ。今度は、アタシの文句」
言いかけたカシスをさえぎって、レモンがギッとガナッシュを睨む。
そして、指を鳴らし始めた。
「アンタ、あのシナリオは最初っからアタシを陥れようとした画策だった・・・てわけ?」
「・・・?」
画策? 何かしたかと彼は考えた。そういえば、冒頭シーンで・・・・
「いや、どっちでもいい。とにかくガナッシュ・・・」
途端、ガナッシュは恐ろしいまでの殺気を感じた。
「テメェは殺す!! ・・あっ、待てっ!!」
言い終わらないうちに、彼はダッシュで駆け出していた・・・。即座にレモンが後を追う。
「待てよっ、俺も行く!」
一陣の風が過ぎ、そこにはフレイアとシードルが残された。
「・・・・・騒がしいね、まったく・・・」
やれやれと、彼は頭を振った。隣で彼女はニコリと笑った。
空は、雲も高く真っ青な背景を映し出していた。
END
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